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専利証書に記載の専利権者が真の実質権利者か否か?—専利権者の「借名登録」

簡秀如/Shih-I Wu


専利権(日本の特許権、実用新案権、意匠権を含む)は、無体財産権の一種であり、それが保護する客体は技術的思想又は意匠であって、一定の形体を備えない。その権利の存在、範囲及び帰属を示すため、専利主務官庁即ち智慧財産局(日本の特許庁に相当)は、関連情報を権利内容の公示外観として公告する必要があるほか、権利者にその証として専利証書を交付する。他人に譲渡、信託、実施権を許諾し、又は質権を設定するなどの事情があって、権利の帰属が変動すれば、「専利法」(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第62条の規定により、智慧財産局に登録する必要があり、登録しなければ、第三者に対抗することができない。言い換えると、智慧財産局が公告した、又は専利証書に記載された専利権者は、原則として「専利法」に基づいて付与される排他的権利を有し、その発明、創作、意匠を実施した者の権利侵害責任を主張することができる。
しかし、知的財産裁判所は、20141031日に作成した102年(西暦2013年)度民専訴字第121号判決のなかで、原告は係争実用新案登録証書と実用新案登録出願書に記載されている権利者であるが、当該実用新案は「借名登録」の方法により原告の名義で登録されたものにすぎないとして、原告は係争実用新案権の真の権利者ではないと認定した。
事案の背景となる事実は、次のとおりである。甲(原告)は係争実用新案権者であり、甲が権利侵害で訴えた乙(被告)とは兄弟関係にあり、両者はかつて共同で事業を運営していたが、その後、仲違いによりそれぞれ会社を設立した。甲は乙の販売する製品が係争実用新案権を侵害しているとして、乙を相手取って訴訟を提起し、損害賠償と侵害排除を請求した。乙は「係争実用新案は実際は両者の父親である丙が創作したものであり、甲の名前で『借名登録』しただけである」と抗弁し、また、「甲乙が係争実用新案権を使用できることについては、実際の創作者である丙も同意しているため、乙に係争実用新案登録侵害の事実はない」と主張した。
裁判所は最終的に、(一)甲は「係争実用新案は父親が発想した創作を改良したものである」と主張しているが、係争実用新案につき登録されている創作者は甲1人だけではなく、乙も含まれているという事実があり、(二)丙は「自らが係争実用新案の実際の創作者であり、当該実用新案は甲の名前で登録しただけである」と証言しており、かかる丙の陳述は、丙が長年この職に従事してきた経歴を考えると、経験則に反していないと認めることができ、(三)証人丁も乙がかつて係争実用新案の創作に参与したと証言しており、(四)甲は、係争実用新案が全て自らが発想したものであることを証明する証拠を提出することができないと認めることができることを理由として、「被告乙は係争実用新案の創作者の1人であり、使用権原がないわけではなく、しかも、甲とその父親である丙は『借名登録』契約を成立させているため、係争実用新案は甲の名義での『借名登録』にすぎず、真の権利者は丙であるとして、甲の請求を棄却した。」
知的財産裁判所のこの事案における見解によれば、民法の「借名登録契約」は無体性質を有する専利権に適用することができるが、専利法に明文規定が置かれていない状況において、当事者間の未公開の「借名登録契約」を理由に、専利公告制度の基本原則を回避することができるか否か、また、第三者が専利権の帰属をどのように判断して取引の安全を保障するのかについては、裁判所のさらに踏み込んだ見解を待たなければならない。


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