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残業問題



メディアの報道によると、従業員が退社後に上司からLINEで仕事を振られた場合、残業とするか否かという問題について、立法委員は「労動基準法」(以下、「労基法」という)一部改正草案を提出し、使用者が労働者の退社後に通信ソフト(LINEなどのコミュニケーションアプリなど)や携帯電話のショート・メッセージなどで当該労働者に仕事を振った場合、すべて残業とみなして残業代を支払う旨を明確に規定し、労働者の権利を保障するよう主張した。実際のところ、残業問題の処理は、労基法の規定ではなく、残業の事実をどのように認定するかが鍵となる。以下に、残業問題について、詳しく説明させていただく。
「残業」(中国語では「加班」)は労基法中の用語ではなく、一般に通用している言い方である。労基法では残業を「通常の労働時間外の労働」又は「延長労働時間」と表現している。労基法の残業についての規範は、主に第32条第13項における規定であり、その具体的な内容は以下のとおりである。
一、使用者は、労働者を通常の労働時間外に労働させる必要がある場合、労働組合から同意を得るか、事業単位に労働組合がない場合は労使会議の同意を得た後、労働時間を延長することができる。
二、前項において使用者が延長する労働者の労働時間は、通常の労働時間と合わせて112時間を超えてはならない。延長した労働時間は、1ヶ月46時間を超えてはならない。
三、天災事変又は突発事件により、使用者が労働者を通常の労働時間外に労働させる必要がある場合、労働時間を延長することができる。但し、延長の開始から24時間以内に労働組合に通知しなければならず、労働組合組織のない場合は、所轄の主務機関に届け出て、審査を受けなければならない。延長した労働時間につき、使用者は事後に労働者に適当な休息を与えなければならない。
労基法中の残業に関連する規定には、以下の規定も含まれる。
一、労基法第39条には「第36条に定める定例休日、第37条に定める休日及び第38条に定める特別休暇について、使用者は通常どおり賃金を支払わなければならない。使用者が労働者の同意を得て休日又は休暇日に労働させる場合、使用者は通常の労働日の賃金の二倍の賃金を支払わなければならない。時期の関係で業務を急ぐ必要があり、労働者又は労働組合の同意を得て通常どおり労働させる場合も同じとする」と規定されている。
二、労基法第40条には「天災事変又は突発事件により、使用者が、継続して労働する必要があると認める場合、第36条から第38条までに定める労働者の休日、休暇を停止することができる。但し、かかる停止期間の賃金は、通常の労働日の賃金の二倍の賃金を支払わなければならず、かつ、事後に休暇、休息を与えなければならない」、「前項の労働者の休日・休暇期間を停止した場合、事後24時間以内に、理由を詳述して、所轄の主務機関に届け出なければならない」と規定されている。
三、労基法第42条には「労働者が健康上又はその他正当な理由により、通常の労働時間外の労働を引き受けることができない場合、使用者はその労働を強制してはならない」と規定されている。
四、労基法第24条には「使用者が労働者の労働時間を延長した場合、その延長した労働時間の賃金は、次の基準により加算する。1.延長労働時間が2時間以内の場合、平日の時給額の3分の1以上を加算して支払う、2.再延長労働時間が2時間以内の場合、平日の時給額の3分の2以上を加算して支払う、3.第32条第3項の規定により労働時間を延長した場合、平日の時給額の二倍を支払う」と規定されている。
前述の規定を総合すると、現行労基法の残業についての規定は、大まかに以下のとおりであることがわかる。
一、残業とは、通常の労働時間外の労働を指し、その情況は、通常の労働時間後の労働時間延長及び休日労働の2種類に分けることができる。
二、残業は、従業員が自ら決定するのではなく、使用者の要求に基づくものである。したがって、原則として、従業員は任意で残業することはできず、事前に使用者から同意を得るか、又は事後に使用者から許可を受ける必要がある。
三、使用者が従業員に残業を要求する場合、原則として、事前に労働組合又は労使会議から同意を得なければならない。かかる同意は、従業員全員又は個別の従業員の同意に代えることはできない。したがって、労働組合のない企業については、従業員に残業をさせる必要がある場合、法により労使会議を招集して、その同意を得る必要がある。「労働部」(日本の厚生労働省に類似)が以前作成した解釈によれば、かかる同意はその都度得る必要はなく、事前に一回だけ得れば、それでよい。使用者が事前に労働組合又は労使会議から同意を得ずに従業員に残業を要求した場合、労基法第79条の規定により、2万新台湾元以上30万新台湾元以下の罰金に処すことができる。
四、使用者が天災事変又は突発事件により従業員に残業させる場合、例外的に、事前に労働組合又は労使会議から同意を得なくてよいが、残業の開始から24時間以内に労働組合に通知しなければならず、労働組合組織のない場合は、所轄の主務機関に届け出て、審査を受けなければならない。この情況において、従業員の残業につき、使用者は法により残業代を支払わなければならないほか、事後に従業員に適当な休息を与えなければならない。天災事変又は突発事件により、労働者を休日・休暇期間に労働させた場合、企業に労働組合組織があるか否かにかかわらず、事後24時間以内に、理由を詳述して、所轄の主務機関に届け出なければならない。また、休日・休暇停止期間の賃金は、通常の労働日の賃金の二倍の賃金を支払わなければならず、かつ、事後に休暇、休息を与えなければならない。使用者が前述の規定に違反した場合、労基法第79条の規定により、2万新台湾元以上30万新台湾元以下の罰金に処すことができる。
五、延長する労働者の労働時間は、通常の労働時間と合わせて112時間を超えてはならない。延長する労働時間は、1ヶ月46時間を超えてはならない。労働部が以前作成した解釈によれば、休日・休暇期間における労働は、通常の労働時間を超過さえしなければ、1ヶ月46時間の限度に計上しなくてよい。使用者が前述の規定に違反した場合、労基法第79条の規定により、2万新台湾元以上30万新台湾元以下の罰金に処すことができる。
六、使用者が従業員に通常の労働時間後の労働時間延長を要求する場合、原則として従業員から同意を得る必要はなく、事前に労働組合又は労使会議から同意を得てさえいればよい。但し、使用者が従業員に休日・休暇期間に労働を要求する場合には、従業員から同意を得なければならない。
七、いかなる種類の残業であろうとも、従業員が健康上又はその他正当な理由により、残業を引き受けることができない場合、使用者はその労働を強制してはならない。使用者がかかる規制に違反した場合、刑事責任を問われ、労基法第77条の規定により、6ヶ月以下の懲役、拘留若しくは30万新台湾元以下の罰金に処し、又はこれを併処することができる。
八、使用者は従業員の残業に対して残業代を支払わなければならない。残業代の計算基準は、通常の労働時間後の延長労働時間が2時間以内の場合、平日の時給額の3分の1以上を加算して支払い、2時間を超える場合、平日の時給額の3分の2以上を加算して支払うものとする。もし、休日・休暇期間中の労働であれば、当該休日・休暇期間中の残業時間の長さにかかわらず、平日の賃金の倍額を支払わなければならない。
以上の説明から、上司が退社後にLINEで従業員に仕事を振り、かつ、当該従業員が確かに労働に従事した場合、現行の法律の規定に基づけば、残業であるとみなされ、労基法を改正して再度明確に規定する必要のないことがわかる。残業問題の真に困難な点は、どのように残業を認定するかである。一般の製造業においては、工場労働者は工場に入ってから労働を開始し、工場を離れれば即ち労働が停止されるため、残業認定の面では比較的容易である。しかし、サービス業については、従業員が通常の労働時間後にオフィス内に居続けても、必ずしも労働しているとは限らず、従業員が自らの都合で一時的にオフィスに残っている可能性もあり、また、従業員はオフィスを離れてからも、会社の業務を処理している可能性もある。
以上に述べた困難を解決するため、現在、実務において、企業は事前に残業規則を制定し、「従業員が残業する場合、事前に申請を提出し、使用者又は管理責任者の認可を受けなければ、残業することができない」と明確に規定しておくやり方が一般的である。急に残業しなければならず、申請の事前提出が間に合わない場合にも、事後に申請を補充提出する必要があり、使用者又は管理責任者の認可を受けなければ、残業と認定されない。認可された残業についてのみ、使用者から残業代の支払いを受けることができる。
前述のやり方はもちろん明確ではあるのだが、従業員が申請を提出して使用者又は管理責任者の認可を受けなければ、残業であると認定されないため、従業員に心理的なプレッシャーを与えることは避けられず、かつ、使用者又は管理責任者に口実を設けて難癖をつける機会を与えることになり、これこそが残業に関する真の問題である。したがって、労基法を改正するだけでは、残業に関する真の問題の解決には不十分であることがわかる。
 

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