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「コンピュータ・ソフトウェア関連発明審査基準」の改正

Genson Hung/Daniel Hung


台湾の「特許審査基準」(「専利審査基準」)の「コンピュータ・ソフトウェア関連発明」の章(以下「コンピュータ・ソフトウェア審査基準」という)は、1998年に制定され、2008年に改正された後、昨年再度改正され、当該改正審査基準は201411日から発効した。
 
今回の改定の重点は以下のとおりである。
 
一、特許出願に係る発明が発明の定義に合致するか否かを判断するときの準則
 
今回の改正では、特許出願に係る発明が発明の定義に合致するか否か判断するときは、特許請求の範囲の記載の形式ではなく、特許出願に係る発明の内容を考慮しなければならないことが強調されている。特許出願に係る発明の一部分のみが自然法則を利用したものではない場合、それが発明の定義に合致しないとはいえない。
 
二、原基準中の「単純にコンピュータを利用して処理を行うもの」という一節を「単純にコンピュータを利用するもの」と改め、ならびに、コンピュータ・ソフトウェア又はハードウェアの助けを借りて実現するビジネス方法が発明の定義に合致するか否かの判断準則についてさらに一歩踏み込んで説明
 
ビジネス方法は社会法則、経験則又は経済法則など人為的な規則である。ゆえに、ビジネス方法自体の発明は、自然法則を利用するものではないため、発明の定義に合致しない。
 
原「コンピュータ・ソフトウェア審査基準」(「電脳軟体審査基準」)では、「ビジネス方法がコンピュータ技術を利用して実現するものであれば、その技術手段の本質はビジネス方法自体ではなく、コンピュータ・ソフトウェア又はハードウェア資源の助けを借りて、ある種のビジネス目的又は機能を達成する具体的な実施方法であり、それは技術分野の技術手段に属すると認定することができるため、発明の定義に合致する」と認めている。
 
改定後の「コンピュータ・ソフトウェア審査基準」は、原基準中の「ビジネス方法は発明の定義に合致する」と認める判断方式を改めて、「本来、発明の定義に合致しないビジネス方法請求項に、コンピュータ・ソフトウェア又はハードウェアを単純に付け加えても、それを発明の定義に合致すると認定させることはできない」としている。但し、発明の全体が技術上の困難を克服した又は技術分野の手段を利用して問題を解決したことにより、たとえば情報システムの安全性の増強、情報システム実行効率の向上、映像認識精度の改善又はシステムの安定性の強化など、システム全体に対して技術分野に関連する効果を生じる場合、発明の定義に合致すると認定されなければならない。
 
三、原基準の「単なる情報の開示」という一節に「ユーザー・インタフェース」及び「データ・フォーマット」が発明の定義に合致するか否かの判断準則を新たに追加
 
特許出願に係る発明が単なる情報の開示にすぎないとき、それ自体は技術思想の創作ではないため、発明の定義に合致しない。原審査基準の総則には「単なる情報の開示」について一般的な定義及び判断準則が既に定められている。
 
コンピュータ・ソフトウェア関連発明中の「単なる情報の開示」についての判断準則に至っては、原「コンピュータ・ソフトウェア審査基準」には、「もともと単なる情報開示に属するコンピュータプログラム又はデータを、機械を通じてコンピュータが読み取り、コンピュータ処理において機能上又は構造上、相互関連性を生じる場合、単なる情報の開示ではなく、技術的思想を有する」と説明されているだけである。
 
改正後の「コンピュータ・ソフトウェア審査基準」には、さらに一歩踏み込んで、「ユーザー・インタフェース」及び「データフォーマット」という、コンピュータ・ソフトウェア関連発明分野において最もよくみられる「単なる情報の開示」の態様を2種類選んで、説明がなされている。当該改正基準では、ユーザー・インタフェースとアルゴリズムの相互作用後に技術効果を生じるのであれば(たとえば、入力装置の精度を上げるか、又はユーザーがコンピュータを操作する際の認識負担を軽減することによって、それが技術上比較的効率の良いマンマシンインタフェースとなる場合)、技術性を有する、又は、データフォーマット(又はデータ構造)とコンピュータ・ソフトウェア若しくはハードウェアの相互作用後に技術効果を生じるのであれば(たとえば、実行後、データ処理又は保存機能が増強される、安全性が強化される場合)、技術性を有し、発明の定義に合致する、と強調されている。
 
四、「手段(ステップ)機能言語」で記載されたコンピュータ・ソフトウェア請求項について、明細書の記載に基づいて実現できるか否かを判断する準則を説明
 
原基準中の「手段(ステップ)機能言語」の関連内容及び判断準則は審査基準の総則において既に改訂されているため、今回の改正では総則と重複する段落を削除した。
 
このほか、原「コンピュータ・ソフトウェア審査基準」には、「手段(ステップ)機能言語」で記載されたコンピュータ・ソフトウェア請求項について、明細書の記載に基づいて実現できるものであるかどうかを判断する準則については特に説明されておらず、コンピュータ・ソフトウェア関連発明がその記載に基づいて実現できるかどうかをどのように判断するかについてのみ説明されていた。たとえば、コンピュータ・ソフトウェア関連発明の明細書の実施方式のなかで、請求項の記載に対応した発明が抽象的な方法又は機能でのみ記載され、当該ステップ又は機能がソフトウェア又はハードウェアでどのように実行又は実現されるのか記載されていない場合、請求項の記載に基づいて発明を実施することができない事態が生じる。
 
改正後の「コンピュータ・ソフトウェア審査基準」は、さらに一歩踏み込んで、「手段(ステップ)機能言語」で記載されているコンピュータ・ソフトウェア請求項について、明細書の記載に基づいて実行又は実現できるかどうか判断する準則を説明している。改正後の審査基準は、「手段(ステップ)機能言語」で記載されたコンピュータ・ソフトウェア請求項を、一般的なコンピューティング機能及び特殊なコンピューティング機能に区分している。請求項に特定されているものが一般的なコンピューティング機能、たとえば一般的な記憶、伝送などの手段であれば、明細書に開示されている一般的な用途のコンピュータは、対応する構造の開示という要件を満たすことができる。特殊なコンピューティング機能であれば、明細書に開示されている対応する構造は、当該機能を達成できる特殊なアルゴリズムを含まなければならず、かつ、当該アルゴリズムは明細書に充分に開示されていなければならない。アルゴリズムは、たとえばフローチャート、文章による記述、数式、又は十分な構造を提供することのできるその他の方式など、理解可能なものであればいかなる方法で表現してもよいが、アルゴリズムのソースコード又は非常に詳細な細部については列記する必要はない。
 
明細書に開示されているアルゴリズムが、発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に、いかにプログラムを設計したかはっきりと知らせることができ、これにより明細書に開示されたアルゴリズムに必要なステップをコンピュータに実行させることができるのであれば、当該アルゴリズムは既に十分に開示されていると認めることができる。請求する手段の名称及び機能が明細書に繰り返し述べられている、又は、当該結果を達成する方式ではなく、達成しようとする結果が簡単に述べられているだけであれば、当該アルゴリズムの明確な開示には属さない。
 
五、「一般機能による物の特定」と「手段(ステップ)機能言語」請求項の明確性の判断準則の区分
 
コンピュータ・ソフトウェア関連発明の請求項は通常、一般機能による物の特定であり、又は手段(ステップ)機能言語で記載される。改定後の「コンピュータ・ソフトウェア審査基準」には、それが明確性要件に合致するかどうかの判断準則について詳細に説明されている。
 
一般機能により物を特定する請求項である場合、当該発明の属する分野における通常の知識を有する者が、当該機能につき出願時の通常の知識を参酌して、ハードウェア構造又はソフトウェアモジュールを具体的に想像できなければならず、そのうえではじめて当該請求項は明確性要件を満たす。手段(ステップ)機能言語で記載された請求項である場合、明細書には当該機能に対応する構造、材料、動作又は当該機能を達成するコンピュータ・ソフトウェアのアルゴリズム又はハードウェア構造が記載されていなければならず、かつ、記載された言語の範囲は広すぎてはならず、そのうえではじめて当該請求項は明確性要件を満たす。
 
「コンピュータ・ソフトウェア関連発明審査基準改正草案公聴会」の資料によれば、一般機能による物の特定又は手段(ステップ)機能言語を区分するメリットは、審査時に、まず一般機能による物の特定で請求項を解釈して、特許要件に合致するか否か判断し、出願人が「請求項は手段機能言語で記載されている」と表明して再審査を請求するのであれば、かかる申請がなされてからはじめて手段機能言語に関する判断を行うことができる点にある。したがって、請求項の特徴は結局、手段機能言語又は一般機能による物の特定に属し、請求項の内容によって直接認定するのではなく、出願人の真意を聞き出す必要がある。
 
出願人が請求項の不明確という問題を解決するために手段機能言語又はステップ機能言語で請求項を解釈する場合、請求項の特徴には明細書に記載された対応する当該機能を完成するのに必要な構造、材料又は動作及びその均等範囲が含まれる。ただし、明細書に記載された実施例を直接縮減するものではなく、そのうち当該均等範囲は、出願時の当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が疑義を生じない範囲に限定する。
 
六、「進歩性」の章に「技術性に資さない特徵」という節を新たに追加
 
「専利法」(※日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)にいう発明は技術性を具えなければならず、即ち、発明の問題解決手段は技術分野にかかわる技術手段でなければならない。しかし、出願人はコンピュータ・ソフトウェア請求項において技術性を具えない特徴を記載するかもしれないため、コンピュータ・ソフトウェア関連発明の進歩性を審査する際、請求項に記載された技術性を具えない特徴が技術性に資するか否かを考慮しなければならない。当該特徴が技術性に資さなければ、コンピュータ・ソフトウェア請求項が進歩性を具えるか否か判断する際に、当該特徴を対比する必要はない。これに準じ、今回の改正では、「技術性に資さない特徴」という節を新たに追加し、コンピュータ・ソフトウェア関連発明が進歩性を具えるか否かを判断する準則の1つとする。
 
コンピュータ・ソフトウェア関連発明において、請求項に記載されている特徴が技術性を具えるのであれば、当該特徴は請求項の技術性に資する。当該特徴が技術性を具えない場合(たとえば「ノベルティ発送」というビジネス手段)、当該特徴が技術性を具える特徴と恊働後、請求項の技術性に資するか否か判断する必要がある。当該特徴が技術性を具えず、かつ、技術性を具える特徴と恊働せず、問題解決の技術手段の一部に属さない場合、当該特徴は周知技術の運用であり、かつ、その他の先行技術と容易に組み合わせることができ、技術性に資さない特徴に属す、とみなさなければならない。
 
この新たな規定によれば、コンピュータ・ソフトウェア請求項が進歩性を具えるか否かを判断する際、「技術性に資する特徴」、即ち技術性を具える特徴、及び当該技術性を具える特徴と恊働して問題解決の技術手段の一部に属す特徴を対比する必要があるのみであり、「技術性に資さない特徴」については対比する必要がない。

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