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特許共有者自らによる特許実施は、その他の共有者に報酬を支払う必要がない



契約又はその他の理由により複数人が一つの特許権を共有する情況は多く見られるが、台湾「専利法」(※日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)は、これに関連する規定がやや乏しく、以下に掲げるわずかな条文しかない。
 
l   共有特許の出願
 
特許出願権が共有である場合、共有者全員により出願されなければならない。2人以上が共同で特許出願以外の特許に関する手続を行う場合、出願の取下若しくは放棄、分割、出願変更又は本法の別段の規定により共同署名しなければならないときを除き、各自が単独でその他の手続を行うことができる。ただし、代表者を定めた場合は、それに従う。(専利法第12条第12項)
 
いずれの共有者も、上記「共同で出願しなければならない」という規定に違反して単独で出願し、かつ、特許を受けた場合、他の共有者は当該特許に対し無効審判を請求し、特許権を取り消すことができる。(専利法第71条第1項第3号)
 
l   共有出願権の処分
 
特許出願権が共有である場合、共有者全員の同意を得なければ、譲渡又は放棄することができない。特許出願権の共有者は、その他の共有者の同意を得なければ、その持分を他人に譲渡することができない。特許出願権の共有者がその持分を放棄する場合、当該持分はその他の共有者に帰属する。(専利法第13条)
 
l   共有特許権の実施と処分
 
発明特許権が共有である場合、共有者が自ら実施する場合を除き、共有者全員の同意を得なければ、他人にこれを譲渡、信託、実施権の設定、又は質権の設定若しくは放棄をすることはできない。(専利法第64条)
発明特許権の共有者は、その他の共有者全員の同意を得なければ、その持分を他人に譲渡、信託又は質権の設定をすることはできない。発明特許権の共有者がその持分を放棄する場合、当該持分はその他の共有者に帰属する。(専利法第65条)
 
以上から、台湾専利法は特許権共有の規範において、特許の出願、出願権及び特許権の処分などの部分についてのみ、共有者全員でこれを行う、又は共有者全員の同意を得なければならない、と明文規定していることがわかる。このほか、「実施」面では、共有者自らが実施することが認められており、その他の共有者の同意を得る必要はないものの、実施によって得られた収益をその他の共有者に配分する、又は報酬を支払う必要があるか否かについては明文されておらず、そのために、実務上、多くの法律問題が生じている。専利法で明文規定が置かれていないこれらの事項については、裁判所が具体的な案件において判決を通じて追加した補充に頼るしかない。
 
知的財産裁判所は、2013926日に作成した102年(西暦2013年)度民専上字第17号判決のなかで、「特許権の共有」に関する問題に対する見解を示し、前述の「特許共有者が自ら特許を実施する場合、その他の共有者に報酬を支払う必要があるか否か」という法律問題について、否定的な立場を採った。

 

l   特許共有者は訴訟において共有特許の無効の抗弁をすることができない

 
専利法第71条第1項には「発明特許権に、次の各号のいずれかの事情がある場合、『何人も』、特許主務官庁に対し、無効審判を請求することができる」と規定されている。そのうちの「無効審判を請求することができる者」について、経済部智慧財産局は2013年版「特許審査基準」第5-1-2ページの「2.1 無効審判請求人」に関する一節で、「特許権者が自ら無効審判を請求する場合、これを受理すべきではない。なぜなら、本法に規定する無効審判手続の進行は、双方の当事者がいずれも参加することを前提としており、ならびに特許権者への答弁手続付与を履行しなければならず、そのうえ、無効審判請求事件は無効審判請求に係る声明、理由及び添付されている証拠の斟酌を原則とし、無効審判請求不成立の審決時、第三者に対してさえ『一事不再理』の阻止効果が生じるため、公衆審査の制度と齟齬を生じることのないよう、上記のいわゆる『何人も』に特許権者は含まれない。したがって、特許権者自ら無効審判を請求する場合、受理しない」と説明している。これに準じ、裁判所は、乙が係争特許の権利者の一人である以上、係争特許無効の抗弁をすることはできないため、係争特許は有効である、と判示している。
 
l   特許共有者自らによる特許実施は、その他の共有者の同意を経る必要がない
 
裁判所は「専利法には、既に、共有者は自ら特許を実施することができ、他の共有者の同意を得る必要がない旨の明文規定が置かれている。したがって、甲の主張には理由がない」と判示している。また、甲は、19877月に施行された専利法施行規則第40条の「特許権が共有であり、共有者全員で実施するのではない場合は、契約で共有者間の権利・義務を規定するとともに、特許主務官庁に届け出なければならない」との規定を自らの主張の基礎として引用している(注:係争特許は1988年に出願され、1990年に特許公告された)。しかし、裁判所は「上記施行規則は既に199410月に改正、削除されており、甲の主張するところの、乙が係争特許の実施により損害賠償を負わなければならない期間の開始日は199610月であるから、甲の主張は採用することができない」と判示している。
 
l   特許共有者自らによる特許実施は、その他の共有者に報酬を支払う必要がない
 
裁判所は、特許権者が自ら特許を実施することは、他人の発明を利用する行為ではないため、権利金を支払う必要はないと判示している。しかも、法律には、特許権者が自ら特許権を実施する場合、他の共有者の同意を得る必要はない、と規定されている以上、他の共有者に使用報酬を支払う必要はない。必要があると(規定)すれば、「他の共有者の同意を得る必要はない」という規範目的に抵触し、ひいては当該規定が形骸化することになる。
 
l   特許共有者自らによる特許実施は、他の共有者の利用又は権利行使を妨げるものではなく、損害は発生しないため、他の共有者は不当利得及び権利侵害行為に係る損害賠償を請求することができない
 

また、甲は、民法の物権関連規定により、「乙の実施行為は依然として排除されなければならず、且つ損害賠償責任を負う又は不当利得を返還すべきである」と主張している。しかし、裁判所は、民法に規定される一般物権と無体財産権は本質においてかなりの差異を有する。無体財産権はその無体性ゆえに、使用し収益を上げる際に一般の物権のように互いに対立することはなく、同時に多くの人が使用し収益を上げることができる。特許権と有体物権の本質も異なるため、民法の規定を類推適用又は準用して共有者の利用を排除することはできない。また、特許共有者自らによる特許実施は、他の共有者の利用又は権利行使を妨げるものではないため、「損害がなければ賠償せず」の法理により、その他の共有者は民法により不当利得及び権利侵害行為に係る損害賠償を請求することはできない。

 

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