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特許ライセンス契約の解釈:当事者真意の探知



2013628日、知的財産裁判所は101年度民専更(一)字第1号判決を作成し、係争特許のライセンス契約に対する解釈結果に基づいて、ライセンサーはライセンスの期限前契約解除後もライセンシーから原契約期間内のロイヤリティを受け取る権利を有する、と判示した。
本案原告は台湾の会社A社であり、当該社は20077月に日本の特許権者B社と特許ライセンス契約を締結した。B社は、A社の特許権侵害責任を免除することに同意するとともに、関連する米国、ドイツ及び日本の特許をA社に非独占的に実施許諾し 、かつ、A社が契約発効後数日以内に、及びその後20072009年の3年間は毎年1231日に、特定金額のロイヤリティを支払わなければならない、と取り決めた。A社は当初、全てのロイヤリティを約束のとおり支払っていたが、20084月に関連業務及び資産を台湾のC社に譲渡し、20081231日に特許権者B社に権利義務を既に他人に譲渡したことを表明したたため、2009年からロイヤリティの支払い義務はない。
その後、ルクセンブルクに籍を置くD社は、特許権者B社から係争契約の債権を既に譲り受けたことを理由に、A社に対し2009年度のロイヤリティ計540万米ドルを支払うよう請求する訴訟を20105月に米国・カリフォルニア州北部連邦裁判所(US District Court for the Northern District of California)に提起した。これを受け、A社が「当該連邦地方裁判所には管轄権がない」と抗弁したため、D社は20109月に訴訟を取り下げ、直ちに、米国・カリフォルニア州サンフランシスコ郡上級裁判所(Superior Court of the State of California, County of San Francisco)に同一の趣旨の訴訟を提起した。しかし、当該上級裁判所は、不便な法廷であることを理由にA社が請求した訴訟停止の申立を認めた。A社はD社を被告として台湾で知的財産裁判所に訴えを提起し、D社の540万米ドルの債権が存在しないことを確認するよう申し立てた。
本件は最高裁判所によって「更審」(※最高裁で原審判決が破棄された場合、高等裁判所に差し戻され、再審理されることになり、これを「更審」という)に差し戻された後、双方の当事者の主な争点は係争特許使用許諾契約の第4.3(b)条規定の解釈に移り、その内容は次のとおりである。
If after the Effective Date…(b) there is a disposition by Party A of the part of its business engaged in manufacturing Licensed Products, all future rights, releases, licenses and immunities hereunder will immediately terminate ipso facto, but in no way shall that affect the rights, releases, licenses and immunities of Party A prior to such acquisition or disposition.
A社は「当該社とB社との間の特許ライセンスが係争契約第4.3条の規定により、既に20081231日にライセンス製品に関連する業務及び資産を処分して終了している以上、B社には2009年のロイヤリティを支払うようA社に請求する権利はない」と主張した。これに対してD社は、「係争契約第4.3条は、A社が取得するライセンスのみを終了するものであって、A社がロイヤリティを支払う義務は終了していない」と抗弁した。
知的財産裁判所は「更審」判決でD社の主張を採用した。その理由は以下のように構成されている。
l   係争契約第4.3条の規範対象はA社のみである。
裁判所は、「係争契約第4条の見出しは『Further Limitation on Release, License and Immunities』であり、第4条の規範又は規制対象は、A社が契約により取得する各権利のみであることがわかる。恐らくは、A社のみが係争契約により『免責、実施許諾』を享受する。よって、第4条は決してB社の契約権利について規定しているわけではない。A社は当然、上記条項によりB社の権利を終了することができない」と判示している。
l   係争契約は、契約終了後のロイヤリティ支払い義務を規定していない。
A社は、「係争契約第5.1(d)条の『$5,400,000 of Payment 4 is in consideration of the license under Clause 3 above for the calendar year 2009.』との取り決めによれば、そのうちの『in consideration of』は『前提条件』を作り出すものである。即ち、A社の540万米ドルの支払い義務は、B社のライセンシングが前提要件である」と主張している。これに対して裁判所は「契約で『in consideration of』という言葉を用いることが必ずしも『前提条件』を作り出すわけではない。また、係争契約第5.1(d)条は、540万米ドルが2009年のロイヤリティであることを取り決めているにすぎず、当該条項自体は、2009年より前にライセンス契約を終了している情況について、法律効果を定めていない。したがって、その法律効果については、依然として、その他契約の約定又は一般契約法の原則を適用して決定する必要がある」と判示している。
l   係争契約第4.3条には2種類の解釈の可能性があり、契約の解釈を通じて当事者の真意を探る必要がある
裁判所は、「係争契約第4.3条には、A社がその一部の営業を処分するとき、それが有する将来の権利、免責、ライセンスはいずれもそれを理由に直ちに終了する、とのみ取り決められており、このときA社には依然としてロイヤリティを支払う義務があるのか否かについて定められていない。係争契約全体を通して見ても、これについて何の取決めもされていない。客観的、理性的な第三者は、この部分につき、当事者が単に取り決めておらず、一般契約法の原則で補充しなければならないと理解する可能性があり、若しくは当事者が故意に排除し、A社が一部の営業を処分することで実施許諾を終了しても、引き続きA社にロイヤリティを支払う義務を負わせようと意図したと理解する可能性がある。したがって、契約の解釈を通じて当事者の真意を探る必要がある」と判示している。
裁判所が最終的に「A社は2009年のロイヤリティを支払わなければならない」と判示したのは、A社がB社と係争契約の内容を協議する過程において、A社は第4.3条に「obligations」という言葉を加えようとしたことがあるものの、この提案はB社の明らかな反対に遭い、その後、A社はかかる事情を知ったが、さらに一歩踏み込んだ協議、整理・明確化、立場の表明を行わなかったことに基づいている。裁判所は「前記の契約締結過程は既に『A社がそのライセンス製品の一部の営業を処分するとき、ロイヤリティの支払いもそれに伴い終了する』ことに同意しないというB社の立場を表明している。よって、客観的、理性的な第三者は、その契約の意味を、A社が処分行為を理由に特許ライセンスを終了しても引き続きロイヤリティを支払う義務をA社に負わせるよう意図した、と理解する」と判示した。A社は、「契約締結時、『obligations』という言葉の削除に反対しなかったのは、契約締結当時、係争契約には既に多くの修正が加えられており、第4.3条に『obligations』という言葉をつけ加えることは、比較的小さい問題でしかなく、『権利がなければ義務もない』という原則に基づけば、A社の権利が既に終了している以上、義務もこれに伴うはずであるため、当該文言は決して加えなくてはならないものではないと考えていたからである」と述べ、A社の真意も、決してそのロイヤリティ支払い義務が特許ライセンス終了に伴って終了しないことに同意したものではない、と主張した。しかし、裁判所は「客観的、理性的な第三者は、A社が外に表さなかった心のうちを知ることはできず、当該第三者が考察するのは、A社が再度意見を表明しなかった、という事実であり、即ち、A社が、ロイヤリティ支払い義務が特許ライセンス終了事由発生時にこれに伴って終了するわけではないということを受け入れた、と考える」と判示した。
最後に、知的財産裁判所は「係争契約には、A社のロイヤリティ支払い義務につき、その部分の営業を処分することによって終了する旨の明文規定が置かれておらず、これはかかる規定を意図的に排除したものである」という契約解釈の結果に基づいて、「D社がB社から譲り受けたロイヤリティ債権は、A社の処分行為により終了せず、当該債権は依然として存在し請求することができる」と判示した。D社も本事件において前記債権につき反訴を提起しており、裁判所はかかる訴えにつき、理由を有するとしてこれを認めている。
以上から、当事者が契約締結前の交渉協議過程において積極的に意思表示を行ったか、又は消極的で意思表示を行わなかったかは、後日、知的財産裁判所の契約条項の解釈に、重大な役割を果たす可能性がある。知的財産裁判所は本事件において、ライセンシーが契約締結過程において「obligation」という文言の削除に反対しなかったことだけを理由に、一般契約原則とは異なる立場を採用し、ライセンス終了後もライセンシーは引き続き原取決めにより終了後のロイヤリティを支払わなければならない(権利を享受していないが、義務は負わなければならない)、と判示した。かかる判決が妥当なものであるか否かは、最高裁判所の判決を待たなければならない。
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