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台湾の意匠制度及び実用新案制度の改正



台湾の改正特許法(以下、「改正法」と言います。なお、台湾の特許法は、発明特許・実用新案・意匠をカバーします。)は20111129日に国会で可決され、201311日に施行される予定です。

201311日に施行されることは、2012822日に正式に台湾の行政院により定められたばかりですが、当所はさっそくクライアント各位にご報告いたします。

以下に、改正法における意匠制度及び実用新案制度の改正についてご案内いたします。

 
1. 意匠制度の改正
 
  今回の改正法では、意匠権の保護対象の範囲が拡大され、部分意匠、コンピューターアイコン(icon)、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)、及び組物の意匠登録が認められるようになったほか、類似意匠制度が廃止され、関連意匠制度が導入されるなど、意匠に関しては、大幅に改正されたと言えます。
 
1.1 保護対象範囲の拡大
 
  (1) 部分意匠制度の導入(第121条)
 
    現行法では、意匠権の保護対象は、完全な物品(部品を含む)の形状、模様、色彩又はこれらの結合のデザインでなければなりませんでした。しかし、これでは、デザインに複数の新規特徴が含まれ、他人がその一部のみを模倣した場合、意匠権の侵害を構成しないことになりますので、デザインの保護が充分とは言えませんでした。そこで、既存のデザインを改良するよう成熟産業分野に奨励するとともに、成熟期にある製品の開発設計に対する国内産業界の需要への対応、及び意匠権の保護強化を目的として、改正法では、日本意匠法第2条、韓国意匠法第2条及び欧州意匠法第3条などの部分意匠(partial design)に係る立法例を参考に、部分意匠を意匠権の保護対象とすることになりました。
 
  (2) コンピューターアイコン(icon)及びグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の意匠登録(第121条)
 
    現行法では、意匠権登録を受けようとする意匠は、物品性及び視覚性を具えなければならず、また、物品性を具えるとは、意匠権登録を受けようとする意匠の物品の外観に、具体的なデザインが施されていなければならないことを言います。つまり、現行法では、意匠を施した物品は、3次元空間において物理的な形状を持つ有体物でなければなりませんでした。
 
    一方、コンピューターアイコン(icon)及びグラフィカルユーザインタフェース(GUI)は、コンピューターのディスプレイに一時的に現れる、視覚的効果を有する2次元の画像(two-dimensional image)です。icon及びGUIは、包装用紙や布の絵柄や模様のように、それらが施された物品に常に現れることができず、かつ、3次元空間において特定の形態を具えないため、現行法では、意匠権の保護対象ではありませんでした。しかし、台湾国内の関連産業においては、電子的な表示を用いた消費性電子製品、IT・通信製品の開発能力が成熟してきており、かつ、それらの製品の使用及び操作と密接な関係にあるicon及びGUIは、既に、米国、日本、韓国、欧州などでは、産業の競争力を強化するため、保護対象と認められていることに鑑み、台湾国内の産業政策及びデザインの保護に関する国際的な趨勢に対応することを目的として、改正法では、物品に使用されるicon及びGUIも意匠権の保護対象となりました。
 
  (3) 組物の意匠登録(第129条)
 
    現行法には、組物の意匠登録を認めるとの明文規定は置かれていませんが、国際的には、それを認める傾向にあり、実務においても、組物の意匠登録がしばしば出願されるという状況がありました。これに対応するため、改正法では、「一意匠一出願」の原則は維持されているものの(改正法第129条第1項「意匠登録出願は、一つの意匠ごとに出願を提出しなければならない。」)、日本意匠法第8条の規定を参考に、当該原則の例外として、同一の類別に属する2以上の物品が習慣的に一組で販売される、又は使用される場合、1つのデザインとして出願することができると明文規定されました。なお、「同一の類別」とは、ロカルノ分類における同一の類別であることを指します。
 
1.2 類似意匠制度の廃止、関連意匠制度の導入(第127135137138条)
 
  現行法の類似意匠制度下では、同一人が類似の意匠について意匠登録を出願する際は、類似意匠として出願することができましたが、類似意匠は、本意匠の権利範囲を確認するという働きを有するに過ぎないため、実質的な保護が与えられておらず、また、性質上、似通った日本の類似意匠制度も1999年に廃止されたことに鑑み、改正法では、類似意匠制度が廃止されました。
 
  一方、産業界では、通常、新製品の開発に当たって、同一のデザインコンセプトの下で複数の類似する製品のデザインが創作されたり、製品が市場に出された後では、市場の反応に応じて、類似するデザインに改良されたりといったことが行われています。改正法では、これらの同一コンセプトのデザイン、又は後から改良して得られた類似するデザインは、元のデザインと同等の保護価値を有し、同等の保護効果を与えるべきであるという考えに基づき、米国のデザインパテントにおける同一の設計概念及び日本意匠法における関連意匠の制度を参考に、同一人が2以上の類似する意匠を有する場合、そのうちの1つを本意匠とし、その他を関連意匠として出願することができるようになりました。(改正法第127条)
 
  関連意匠は、本意匠の出願日から公告日までいつも出願できます。また、関連意匠は、本意匠に類似していなければなりませんので、関連意匠にのみ類似し、本意匠に類似しない場合は、関連意匠とは認められません。(改正法第127条)
 
  改正法では、さらに、関連意匠権は単独で主張することができ、かつ、類似の範囲に及ぶと規定され、独立した権利が与えられました。したがって、本意匠権が無効審判で取り消された、又は年金未納で消滅した場合も、関連意匠権はそれに影響されることなく存続します。(改正法第137条)
 
  ただし、関連意匠は本意匠に類似するものですので、同一人の権利期間が実質的に延長されることを回避するため、改正法では、関連意匠権の存続期間が、従来の類似意匠と同様に、本意匠権と同時に満了すると規定されました。(改正法第135条)
 
  また、関連意匠権者と本意匠権者は同一人でなければならないため、改正法では、関連意匠権は、本意匠権とともに譲渡、信託、承継、実施権の設定又は質権の設定をしなければならないと規定されました。なお、上述のとおり、本意匠権が無効審判で取り消された、又は年金未納で消滅した場合でも、関連意匠権は存続しますので、存続する関連意匠権が2以上のときは、これらの関連意匠権も、同時に譲渡、信託、承継、実施権の設定又は質権の設定をしなければなりません。(改正法第138条)
 
1.3 意匠の分割(第130条)
 
  今回の改正法では、特許出願について、初審査特許査定後の30日以内にも分割出願することができるよう規定が緩和されましたが、意匠登録出願には適用されません。つまり、意匠登録出願の場合は、従来どおり、初審査において登録査定された場合は、分割出願することができません。
 
1.4 経過措置(第156条及び第157条)
 
  (1) 部分意匠への出願変更
 
    改正法では、その施行前に査定されていなかった意匠登録出願につき、出願人は改正法施行後3か月以内に、物品に係る部分意匠登録出願に出願を変更することができると規定されました。(改正法第156条)
 
  (2) 関連意匠への出願変更
 
    改正法では、その施行前に査定されていなかった類似意匠登録出願であって、かつ、本意匠登録の公告前に出願したものは、改正法施行後3か月以内に、関連意匠登録出願に出願を変更することができると規定されました。なお、出願変更しなかった場合は、改正前の類似意匠登録に関する規定が適用されます。(改正法第157条)
 
2. 実用新案制度の改正
 
  今回の改正法において、実用新案制度に関し大幅な改正はありませんが、その変更点について、以下にご説明いたします。
 
2.1 自発補正のできる時期について(第109条)
 
  現行法は、実用新案登録出願の明細書又は図面の補正を申請する場合、出願日から2ヶ月以内にこれを行わなければならないと規定しています。改正法では、この時期的な制限が排除され、処分前にいつでも自発補正ができるようになりました。
 
2.2 実用新案権が取り消される場合の実用新案権者の損害賠償責任に関する改正(第117条)
 
  実用新案権が取り消される場合、取り消される前の権利行使により他人に損害を被らせた場合は、賠償責任を負わなければなりませんが、免責条件として、現行法においては第105条第2項に「実用新案技術報告の内容に基づいて、又は相当な注意を払った上で権利を行使した場合には、過失がなかったものと推定する。」と規定されています。改正法においては、権利の濫用を一層防ぐべく、第117条に「実用新案技術報告の内容に基づいて、かつ、相当な注意を払った上で権利を行使した場合には、この限りではない。」と規定されています。実用新案権者が実用新案権の行使をする場合、事前により慎重な検討と注意が要求されることになります。
 
2.3 実用新案技術報告の対比する従来技術について(第115条)
 
  現行法には、実用新案技術報告の作成の際、対比される先行技術は、出願前に既に刊行物に記載されたり、公然実施されたもの、及び出願前に既に公然知られたものとすると規定されています。改正法では、対比される先行技術は、出願前に既に刊行物に記載されたもののみと改正されました。
 
2.4 訂正の審査について(第118条)
 
  実用新案の訂正請求に関し、現行法においては、実体審査で審査されますが、改正法においては、方式審査のみで審査されます。但し、訂正請求が無効審判請求事件の審理中にある場合は、訂正請求と無効審判請求両方の審理及び審決を併合して行う旨規定されています。
 
2.5 実用新案と特許の二重出願制度について(第32条)
 
  同一人が同一の創作につき、同日にそれぞれ特許及び実用新案登録を出願することについては、現行の特許法第31条でも既に「同一の発明について、2以上の特許出願があった場合、最先に出願した者のみが特許を受けることができる。」(第1項)、「その出願人が同一人である場合、期限を指定していずれか1つの出願を選択するよう出願人に通知しなければならない。当該期限が経過しても、いずれか1つの出願を選択しなかった場合は、いずれの出願も特許を受けることができない。」(第2項)、「…前三項の規定は、同一の発明又は創作がそれぞれ特許及び実用新案登録を出願する場合に準用する。」(第4項)と規定されており、これにより、「二重の権利(ダブルパテント)」を防いでいます。しかし、実用新案登録出願の審査は方式審査のみで先に実用新案権が発生するため、特許出願が実体審査を経た結果、特許を受けることができると認められ、かつ、出願人が特許権を選択した場合、実用新案権はなくなりますが、これまでに発生した実用新案権と、特許出願が設定登録された後に発生した特許権との間には、やはり「二重の権利」が生じることになります。このような情況に対しては、現行の特許法において明確に規定されていませんので、台湾特許庁は、20088月に発行した「専利法逐条解説」で、上記第31条に関し、「実用新案登録出願の審査は方式審査のみで先に実用新案権が発生するが、特許出願の実体審査の段階に、実用新案と特許が二重出願されたことがわかった場合は、いずれか一つの出願を選択するよう出願人に通知しなければならない。出願人が特許出願を選択した場合、当該実用新案権は取り消すべきであり、権利は最初から存在しなかったものとみなす。ただし、実用新案権につき、本法は、職権による取消しの法源が削除されたので、職権により当該実用新案権を取り消すことはできないという説もある。」と解説しています。当該解説からも、同一人による同一創作の実用新案と特許の二重出願による「二重の権利」の取り扱いに関する見解が分かれていることが窺えます。
 
  今回の改正法では、上記のような、同一人の同一創作の実用新案と特許の二重出願による「二重の権利」の取り扱いを明確にすることにより「二重の権利」の発生を防止すべく、第32条において、新たな規定が導入されました。
 
  改正法第32条の規定によれば、同一の創作につき、同一人が同日に特許出願及び実用新案登録出願をする、つまり「二重出願」をすることは、現行の特許法と同様に可能です。一方、現行の特許法では明文規定されていない上記「二重の権利」の問題については、改正法第32条に、その取り扱いが明文規定されました。
 
  つまり、「二重出願」した場合、同様に、実用新案は方式審査のみなので先に実用新案権を取得できますが、特許出願を実体審査した後、特許をすべき旨の査定をしようとする場合、台湾特許庁は、実用新案権と特許権のいずれか一方を選択するよう出願人に通知し、期限が満了しても選択しなかった場合、特許庁は、当該特許出願について拒絶をすべき旨の査定をします。これにより、「二重の権利」を禁止します。
 
  更に、上記「選択の通知」を受けた出願人が既に発生した実用新案権を選択した場合、当然、特許庁は特許出願について拒絶査定をします。一方、出願人が特許権を選択した場合は、既に発生した実用新案権は、「二重の権利」の禁止という原則に基づく改正法第31条第二項により、その実用新案権は、最初から存在しなかったものとみなします。これにより、「二重の権利」の付与を禁止します。
 
  また、特許出願が特許査定される前に、当該実用新案権が既に当然消滅している場合(特許料の未納付により自ら放棄した場合など)又は取消しが確定している場合、当該実用新案に開示されている技術は、既に公衆が自由に運用できる技術となったため、改正法第32条第3項では、特許査定前に、実用新案権が既に当然消滅している場合又は取消しが確定している場合には、特許は付与しないと規定されました。
 
ご質問、お気づきの点、ご要望などございましたら、お気軽に林(chlin@leeandli.com)までお問い合わせください。

 

 


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