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特許権存続期間の延長における外国臨床試験期間の計算方法

簡秀如/Frank Lee


台湾専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第53条では、「医薬品、農薬又はその製造方法に係る特許権の実施が、その他の法律の規定により、許可証を取得しなければならない場合、それが特許出願の公告後に取得する際、特許権者は1回目の許可証をもって、特許権存続期間の延長登録を出願することができる」が、「その延長を許可する期間は、中央目的事業主務官庁から許可証を取得するために発明を実施することができなかった期間を超えてはならない」と規定されている。智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は、専利法の規定に基づいて「特許権存続期間延長登録決定規則」(中国語「專利權期間延長核定辦法」、以下「決定規則」という)を制定し、同規則第4条第1項において、特許権存続期間の延長を求めることができる期間は「中央目的事業主務官庁が発行する医薬品承認許可証を取得するために国内外で実施した臨床試験期間」を含む旨が明文化された。また、2018411日に改訂された「特許権存続期間延長登録審査基準」(以下「審査基準」という)においても、「医薬品規制調和国際会議(ICH)の基準を満たした臨床試験報告書で定義された試験終了日(study completion date)」を外国での臨床試験期間の「終了日」とする旨が規定された。

 

特許権存続期間の延長について、審査基準においては「臨床試験報告書で定義された試験終了日(以下「試験終了日」という)」を外国での臨床試験期間の「終了日」として延長期間を計算するとされたが、このような規定が適切かどうかについては司法実務上の見解が分かれている。

 

最高裁判所は、2018531日に下した106年(西暦2017年)度台上字第1904號民事判決において、以下の見解を示した。「医薬品の臨床試験は、その医薬品の投与後にすぐに結果が出るものではなく、さまざまな投与条件の設定とその反応に対して、専門知識に基づいて臨床試験データを分析、対比及び解読してはじめてそれに意味付けし、その試験結果を示すことができる。主務官庁その試験結果に基づいて当該医薬品の販売承認の可否を決定する。よって、上記の「決定規則」でいう『臨床試験期間』とは、臨床試験の開始日から試験結果が示される日までの期間を指すべきである。そしてはじめて1994年の専利法(又は2001年の専利法)第51条に規定する目的に合致することができるのである」。

 

最高裁判所は上記の106年(西暦2017年)度台上字第1904號民事判決で原判決を棄却し知的財産裁判所に差し戻したが、知的財産裁判所は差し戻し審で20181227日に107年(西暦2018年)度民専上更()字第1号判決を下したが、依然として最高裁判所とは異なる見解を示した。つまり、知的財産裁判所は、「いわゆる『臨床試験期間』とは、もとより立法趣旨に従って『臨床試験の開始日から試験結果が示される日までの期間を指す』と解釈することができるが、特許権者と公衆の利益のバランスをとるために、やはり「決定規則」に定める文言により適用されるべきであり、また、「国際上の合法的な試験機関はいずれも試験報告書で臨床試験期間の開始日と終了日を明記し、明らかな誤りがない限り、延長登録の出願を審査する官庁はそれを尊重する」などと述べ、審査基準の規定に肯定的な評価を与えた。本件は控訴されず確定した。

 

知的財産裁判所が審査基準を支持する立場は、最高裁判所に受け入れられなかった。最高裁判所は201951日に別件で下した107年(西暦2018年)度台上字第2358号民事判決においては、上記の106年(西暦2017年)度台上字第1904号判決の見解を維持し、さらに「臨床試験の終了日は、単に被験者に対して当該試験の最終回の用量を投与する日に過ぎず、その後さらに、実験の結果を観察、記録及び解析しなければならなず当該報告書に記載される試験期間の終了日にその臨床試験の成果はまだ示されないはずである」と述べた。以上のことから、最高裁判所は、特許権存続期間の延長について「試験終了日」を外国での臨床試験期間の「終了日」として延長期間を計算するという審査基準の規定に対し、明確に否定的な立場を取っていることが分かる。

 

知的財産裁判所はその後、2019926日に108年(西暦2019年)度行専訴字第15号行政判決を下し、最終的に最高裁判所の2つの判決と同じ見解を採用するように改め、また、「決定規則」でいう「外国での臨床試験期間」の「終了日」は、臨床試験報告書に記載された「日付」とすべきである、と具体的に示した。その理由としては以下の点が挙げられる。まず、「試験報告書完成後」、開鍵(盲検の解除;unblind)してからはじめて試験結果が得られることから、「報告書の日付」を「外国での臨床試験期間の終了日」とすることは、臨床実務のやり方と相違するところがない。次に、現行の審査基準の改訂前に、智慧局の審査実務上では、「報告書の日付」を「外国での臨床試験期間の終了日」とすることもあったため、「報告書の日付」の採用は実務運用の妨げとならない。さらに、台湾では、すでに5年間の延長期間の上限を定めており、公共の利益、ジェネリック医薬品と新薬品の市場利益のバランス、特許権存続期間の延長登録制度の目的などを考慮しても、「報告書の日付」を「外国での臨床試験期間の終了日」とすることは台湾の政策に違反するものではないと思われる。よって、臨床試験報告書に記載された「報告書の日付」を「外国での臨床試験期間」の「終了日」としてはじめて現行専利法第53条でいう「中央目的事業主務官庁から許可証を取得するために発明を実施することができなかった期間」の立法趣旨に合致することができ、また、主務官庁の特許権存続期間の延長登録の出願に対する明確性の要求も満たすことができる。

 

現在、知的財産裁判所と最高裁判所の見解が統一されているように見えるが、慧局は控訴しているところで、審査基準もまだ改訂されていないため、行政機関と司法機関の間の見解の相違がどのように調整されるべきかについては、観察が待たれるところである。

  



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