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特許出願前の公然実施の立証について


簡秀如/Elina Yu

 台湾専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第22条第1項第2号の規定により、発明が出願前に既に「公然実施」された場合、新規性を欠くものとして特許を受けることができない。無効審判の実務上では、無効審判請求人は、係争特許の技術内容を実施した実物製品を「公然実施」の証拠として提出することがよく見られる。実物製品には通常日付が表示されていないため、無効審判請求人は、当該実物製品が確かに係争特許の出願日(又は優先日)前に市場に流通したことを特許主務官庁又は裁判所に納得させるために、それに関連する証拠を提出する必要がある。その時、主務官庁又は裁判所による審査の厳格度が、当該実物製品を「公然実施」の証拠として採用できるか否かの鍵の1つになる可能性がある。

 

知的財産裁判所が2019612日に下した107年(西暦2018年)行専訴字第63号行政判決から見れば、主務官庁と裁判所が採用した認定基準が異なっていることが分かる。

 

本件では、無効審判請求人は「スポーツアンダーウェア構造の改良」に関する実用新案権(以下「係争実用新案」という)に対して登録無効審判を請求し、その証拠には、1枚のスポーツアンダーウェアの実物(証拠3)といくつかの係争実用新案登録出願日前に公開されたブログ記事(証拠2)が含まれている。無効審判請求人の主張は次のとおり。証拠2に掲載された写真、動画から見れば、当該ブログ記事は消費者が証拠3のスポーツアンダーウェアを購入し又は贈呈された後に投稿したユーザーの感想であることが分かり、また、当該スポーツアンダーウェアと係争実用新案とを対比すると、両者が同じ構造的特徴を有していることも明らかであるため、係争実用新案は出願前に確かに公然実施されていたものと考えられる。これに対し、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)は証拠2に示される内容と証拠3の実物サンプルとを対比した後、両者のブランドも、外観上の色彩特徴や構造も同じであると認めたため、証拠3を係争実用新案の新規性欠如を証明する証拠として受け入れ、無効審判請求が成立すると審決(無効審決)した。その後の経済部の訴願決定もその審決の結果を維持した。

 

しかしながら、知的財産裁判所は全く異なる立場を取った。同裁判所は上記判決に以下のように判示した。「参加人が証拠3を提出したとき、証拠3がいつ得られたものであるかを証明できる資料を添付しておらず、ただ単に証拠3は証拠2のウェブページ、投稿記事及び動画に言及たアンダーウェアの実物サンプルであると思ったに過ぎない。この点も原処分及び訴願決定に認められた。しかしながら、証拠3は実物サンプルであり、証拠2は写真や動画によって製品の外観を表すものだけであり、それには製品の内部構造解析に関する情報が含まれていないことから、両者はせいぜいブランドも外観上の色彩特徴も同じであることを認めることができるのみで、『構造が同一』については全く根拠のない推論であり証拠3は係争実用新案登録出願前にすでに存在していたことを認められず証拠3と証拠23の組合せをもって係争実用新案の請求項13-6が新規性を具えないことを証明できないのは当然である。」

 

この案件では、知的財産裁判所は、「公然実施」に対してより厳しい立証責任要求しているように思われた。無効審判請求人は無効審判戦略の策定にあたり、その点についてもっと注意を払うべきである。

 

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