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専利権者が民事訴訟において請求項について自分に不利な訂正請求をした場合、裁判所は訂正後の範囲に基づいて審理することができる



 専利(特許、実用新案、意匠を含む)権侵害訴訟において、被疑侵害者(被告)が専利の有効性の抗弁を主張するとともに、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)に対し無効審判を請求することは一般的である。被告から生じた専利の有効性をめぐる争いに応じるため、専利権者は智慧局に請求項の範囲に係る訂正請求をする可能性がある。智慧局が訂正請求に対して認めるか否かについて決める前に、知的財産裁判所は一体、訂正前(すなわち、まだ有効な範囲)又は訂正後(審査中、認めるかどうかは未定)の請求項に基づいて審理を行うのか、それとも専利権者による訂正請求の内容に対し自らそれを採用するか否かを判断するか。知的財産案件審理規則(中国語「智慧財産案件審理細則」、以下「審理規則」という)第32条には、「専利権侵害に係る民事訴訟に関し、当事者が専利権に取り消すべき又は廃止すべき理由があると主張又は抗弁し、かつ専利権者が既に知的財産主務官庁に専利範囲の訂正を請求した場合、その訂正請求が明らかに認められない、又は訂正が認められた後の請求範囲によれば、権利侵害に該当しないため、直ちに本件の審理及び裁判を行うことができる場合を除き、その訂正手続の進捗状況を斟酌し、並びに双方の意見を聴取した後、適切な期日を指定すべきである」と規定されているが、上述した裁判実務上の問題に対して明確な解決策がまだ提示されていない。

 

現在の知的財産裁判所の裁判実務を観察してみると、大多数の裁判官が専利権者による訂正請求の内容に対し自らそれを採用するか否かを判断する傾向が見られるようであるが、個別案件の状況により異なる処理方法もある。知的財産裁判所が20181220日に下した107年(西暦2018年)度民専上字第16号判決では、専利権者が請求しかつ智慧局に係属中の訂正内容により、その権利侵害訴訟上不利な立場におかれることになる場合、当事者自身の選択であるとして、裁判所は訂正後の請求項に基づいて直ちに裁判することができると示された。知的財産裁判所の論理の概要は次のとおりである。

 

1審理規則第32条でいう「訂正が認められた後の請求範囲によれば、権利侵害に該当しないため、直ちに本件の審理及び裁判を行うことができる」とは、その前後の文言から、「訂正後」の専利請求の範囲に基づいて審理することを指しているはずである。さもなければ訂正前の公告範囲に基づく場合、比較的大きな専利請求の範囲により被告の行為が権利侵害に該当することになる可能性があるため、当該条文規定の趣旨に合致していないはずである。

 

2専利権者が提訴する際に、処分権主義に基づき、本来、当事者、訴訟上の請求、訴訟物(審判の対象)及びその原因事実を特定する権利及び義務を負うもので、原告が民事権利侵害訴訟において自己に不利となる訂正後の専利請求の範囲に基づいて権利を主張した場合(訂正後の範囲により権利侵害に該当せず、又は専利が無効となるため、専利権者には不利である)、裁判所は原告の自己に不利となる主張に基づき本件の裁判をしてはならない訳ではない。

 

3民事権利侵害訴訟において、専利権者が民事裁判所に主張した専利に関する訂正の再抗弁は、当該民事訴訟における自己の専利の有効性の維持を目的とする主張であり、そはは、民事訴訟における攻撃防御の「抗弁」であり、専利請求の範囲の実質的変動の効果は生じていない(訂正が智慧局により公告されてこそ初めて対世効を有する)。たとえ、民事訴訟において専利権者が、訂正請求済みであるがまだ公告されていない訂正内容をもって権利を主張し、民事裁判所が当該回の訂正内容に基づいて専利無効又は権利侵害なしの判決を下しても、後日、専利権者はまたその専利請求の範囲の訂正を再度請求することによりその専利の有効性を維持することができ、また、別件の民事訴訟においてこの「有効な専利請求の範囲」の訂正の再抗弁を主張することができる。当該訂正が智慧局により許可され公告された場合、さらに対世効が発生する。よって、民事裁判所は専利権者が主張するまだ公告されていない自己に不利な訂正内容に基づいて斟酌することは、専利権者自らの選択に基づいたもので、かつ専利権者のその後の権利行使にも影響しないものであり、民事訴訟の当事者弁論主義、処分権主義の精神に反することはない。

 

知的財産裁判所の上記判決における論述は、当事者処分権主義を核としたものである。専利権者が請求項の訂正を被疑侵害者の有効性の抗弁に対する防御方法とする場合、その訂正請求の対策が権利の有効性と権利侵害の主張を両立するものであるか否かを適切に評価することがよい。

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