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著作の出資者が招聘を受けた者に報酬を支払っていない場合、著作の出資者はその著作を利用することができるのか

簡秀如/Yu-June Tseng


 台湾著作権法第12条第2項に「招聘を受けた者を著作者とする場合、その著作財産権は契約の約定により、招聘を受けた者又は出資者が享有する。著作財産権の帰属について約定がない場合、その著作財産権は招聘を受けた者が享有する。」と規定されており、同条3項にはさらに「前項の規定により著作財産権が招聘を受けた者に帰属する場合、出資者は当該著作物を利用することができる。」と規定されている。すなわち、出資して他人に著作物の創作を依頼する際、その著作財産権の帰属について約定がない場合、法により招聘を受けた者が著作財産権を享有し、出資者は当該著作物の利用権を享有する。従って、出資者が報酬をまだ支払っていない場合、招聘を受けた者は同時履行の抗弁権を主張し、出資者に給付義務の履行前にその著作物を利用することはできないと主張することはできるかという問題が生じる。

 

201811月付けの知的財産裁判所107年(西暦2018年)度民著訴字第13号判決からは、否定の見解が伺われる。本件被告は出資して原告を招聘し書籍の執筆を依頼したが、その後原告の原稿内容に不満があるとして、約定した報酬の支払いを拒むとともに、自ら原稿を修正して出版した。原告は、被告の行為がその著作権を侵害したとして損害賠償を請求した。同裁判所は、最高裁判所の台上字第1895号民事判決の以下の判旨、すなわち、「著作の出資者による法定の利用権と約定した報酬との間に互いに対価関係に立っているものではないため、同時履行の抗弁権がないといえる」、「出資者の利用権自体は法律に基づくものであり、当事者の約定に基づくものではなく、被告らがたとえ利用したとしても法律に禁止されるものではない」という内容を引用し、たとえ被告が全ての報酬を給付しなくても、その当該原稿の利用権には影響せず、且つ、被告が出資者であるため、著作権を侵害する故意又は過失が無く、原告の著作権の侵害に当たらないと判示した。

 

上述の判決では、著作権法第12条第3項の規定について、法律では約定により報酬給付をしていない出資者でも著作物を利用することができると解釈しているが、妥当であるか否かについては懸念が残る。知的財産裁判所は20186月に106年(西暦2017年)度民著上易字第6号民事判決において、出資者が約定どおり費用を給付していないのに著作物を引き続き利用する状況について、招聘を受けた者は民法第254条の規定に基づき、相当の期限を定めて出資者に契約履行、報酬の給付を催告することができ、また、出資者が期限内に履行しなかった場合、契約解除することができ、契約解除後、双方の出資と招聘を受ける関係は既に存在せず、原出資者はその利用権を主張することはできず、著作物の利用を停止しなければ、その著作権侵害の責任を追及できる、と判示している。この判例は参考とすることができる。



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