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ドメインネーム紛争処理事件について一事不再理の原則が適用されるが、新事実又は新証拠が発見された場合再度申し立ては可能


Ruey-Sen Tsai/Celia Tao

台湾の国コードである「.tw」のドメインネームを巡る紛争の解決手段として、公平交易委員会(日本の公正取引委員会に相当)への申告、裁判所への訴訟提起、仲裁の申し立てなどの従来の救済措置のほかに、紛争を安価かつ迅速に解決できるよう、当事者はさらにドメインネーム紛争処理機関に申し立てることができる。ドメインネームの登録を管轄するTWNICTaiwan Network Information Center、中国語:財團法人台湾網路資訊中心)は2001年に「TWNICドメインネーム紛争処理法」(以下「処理法」という)(中国語:「財團法人台灣網路資訊中心網域名稱爭議處理辦法」)を制定するとともに、財団法人資策会(Institute for Information Industry、中国語:資訊工業策進會)科学技術法律研究所(以下「資策會科法所」という)及び台北弁護士会2つの機関を紛争処理機関されている。

 

前述の「処理法」第5条第1項の規定によれば、申立人は、登録者のドメインネーム登録が次に掲げる要件を満たす場合、紛争処理機関に申し立てることができる。「一、ドメインネームと申立人の商標、標章、氏名、事業者名称又はその他の標識が同一又は類似しているため混同を生じる。二、登録者がそのドメインネームの登録について、権利又は正当な利益がない。三、登録者が悪意によりドメインネームを登録又は使用している。」手続上、ドメインネーム紛争処理メカニズムは、当事者が裁判所に訴訟を提起することに影響を及ぼさないため、紛争解決機関の裁定に不服な当事者は、依然として裁判所に救済を求めることができる。しかしながら、当事者の申立ては、前述のいずれの紛争処理機関によって棄却された場合、別の紛争処理機関に再び申し立てることができるかについて、実務では、依然として疑義が残されている。

 

現在の「処理法」には一事不再理の原則と規定されていない。同法第16条には、「処理法」に規定のない事項については中華民国の法律を適用するという概括的な規定が定められている。過去、台北弁護士会の専門家チームがAmazon.tw97年(西暦2008年)網爭字第003号)事件で下した裁定によれば、ドメインネーム紛争事件の処理について一事不再理の原則が適用されるべきだとされている。最近、台北弁護士協会もまたBaidu.com.tw107年(西暦2018年)網爭字第002号)事件で、ドメインネーム紛争事件の処理について一事不再理の原則が適用されるべきであるが、先行事件の裁定が下された後に新事実又は新証拠が発見された場合、専門家チームが同一の事件に対して再度の実体審査を行うことができる、との見解を改めて示した。

 

本件の申立人は、まず、20182月に資策會科法所にドメインネーム紛争処理手続の申立(STLI2018-001)を行い、登録者が申立人の商標と同一又は極めて類似しているドメインネームを使用し、ユーザーをアダルトコンテンツを持つ有料ライブチャットサイト誘導し、消費者に登録者は申立人と関係あることを信じさせようとすることが悪意ある行為であり、かつ、申立人の商標も世界的に有名で、世界最大の中国語検索サイトライブラリであるから、登録者がドメインネームを登録する時に申立人の存在を既に知っていたはずである、と主張した。申立人の主張に対し、登録者は、係争ドメインネームは2000年から今に至るまで何度も登録可能な状態になっていることから、申立人は係争ドメインネームの登録を気にしていないことわかり、かつ、登録者は数年にわたってドメインネームを使用してきており、すでに百万以上の登録者を持っており、ドメインネームは一般大衆によく知られるようになった、と答弁した。これに対し、資策會科法所の専門家チームは、以下のような見解を示した。本件のドメインネームの特取部分は申立人の商標と全く同じであり、かつ、登録者が経営しているアダルトライブチャットサイトには、法によりレーティングマークが表示されるが、社会の一般通念によれば商標を損なうおそれがあるため、登録者のドメインネームが混同を生じ、登録者はそのドメインネームの登録について、権利又は正当な利益がない。しかしながら、申立人の中国での商標登録出願と登録者のドメインネーム登録申請との時間はほぼ同時しており、かつ、登録者が2007年から10年以上にわたって更新料を払い続けてきているので、当該ドメインネームの経営を長く続ける決意があり、悪意によりドメインネームを登録したものではない。これにより、資策會科法所は、申立人の主張が「処理法」第5条第1項第3号を満たさないとして申立てを棄却した。

 

その後、20186月に、申立人は再び別の紛争処理機関、すなわち台北弁護士会に申立をした。台北弁護士会の専門家チームは、まず、本件は一事不再理原則の適用の有無について疑義があると指摘した。また、ドメインネーム紛争処理の専門家チームによる申立事件の審査は、原則として、書面により行われっている。職権で証拠を取り調べることができるが、証拠調べの結果は双方に提示して弁論を行わなかったため、裁判所による判決のように、既判力という効力を付与することは適切ではない。ドメインネーム紛争裁定の性質は、検察官による不起訴、起訴猶予処分に相当すると考えられ、ドメインネーム紛争事件の処理は、新事実又は新証拠がなかった場合、当然再び申し立てることはできない。しかし、本件において、申立人が申立書に、先行事件の裁定が下された後にネチズンの通報を受け、さらに9つの新証拠を提出した、主張したので、一事不再理原則が適用されるが、本件には新事実又は新証拠が発見されたため、台北弁護士会の専門家チームは本件申立てについて実体審査を行うことができる。

 

本件において、「処理法」第5条第1項第1号及び第2号について、台北弁護士会の専門家チームは同様の見解を示した。しかし、同法第5条第1項第3号について、同チームは、当該号で規定される「登録者が悪意によりドメインネームを登録又は使用している」ことは申立の成立要件であり、当該規定の適用については、「悪意による登録」又は「悪意による使用」のいずれかに該当すれば十分であり、両者を同時に満たす必要はない、との見解を示した。本件の事実について、同チームはさらに以下のとおり説明した。申立人の商標は2009年に、経済部智慧財産局(台湾の知的財産主務官庁。日本の特許庁に相当)の商標拒絶第0324288号査定書によって、著名商標であると認められており、また、20119月に商標登録を出願したので、遅くとも2009年までに、登録者はすでに申立人の存在を知っていたはずである。しかも、登録者の会社名たる台湾百度(バイドゥ)企業号及び係争ドメインネームを使用するウェブサイトに、故意をもって百度ライブチャットルームの名称及び簡体字表示を使用しているので、一般大衆に申立人の商標などとの混同を引き起こさせる意図を持っている。たとえ登録者の行為は登録時に「悪意による登録」の要件に該当しなかったとしても、2013年に現在のライブチャットサービスに係争ドメインネームを使用してからは、一般大衆に申立人の商標などとの混同を引き起こさせる意図を持っていないと言い難い。よって、台北弁護士会の専門家チームは本件申立が成立したとし、申立書の請求により係争ドメインネームを申立人に移転すべき旨の裁定を下した。

 


 

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