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知的財産裁判所による「数値限定請求項は選択発明か否か」の判断

簡秀如/Powei Huang


選択発明とは、既知の発明の上位概念に含まれる下位概念を選択して構成要件とする発明を指す。現行の専利(特許、実用新案、意匠を含む)審査基準第二篇第3章特許要件第3.5節によると、選択発明における進歩性の判断はより厳しくて、選択された部分が従来技術と比べて予期できない効果を奏する場合のみ、当該発明は容易に完成し得るものではないと判断しなければならない。知的財産裁判所は106年(西暦2017年)度行専訴字第71号行政判決において、数値限定を含む請求項に係る発明が選択発明に属するか否かについて明確に示している。

 

本件は「摩擦体を備える筆記具」に係る特許発明で、その請求項1には「ガラス板上で1,000 gの荷重をかけて加圧した時の接触面積(A)が3.013.0 mm2の範囲内である」、「ガラス板上で500 gの荷重をかけて加圧した時の接触面積(B)が1.43.2 mm2の範囲内である」及び「ABB4Bの関係式を満たす」等の技術的特徴が含まれている。本件発明に対し、参加人が無効審判を請求したところ、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)は無効成立として係争特許を無効にする審決を下した。行政訴訟(日本の審決取消訴訟に相当)の段階において参加人は、係争特許の請求項1における上述した接触面積に関係する限定は選択発明であり、原告(すなわち特許権者)は当該数値限定に臨界的意義が存在し、従来技術と比べて予期できない効果を奏することが証明できないため、進歩性を具備しない云々と主張した。

 

これについて知的財産裁判所は次のように指摘した。「選択発明は、既知の比較的大きな群又は範囲から、その中の具体的に開示されていない個別成分、サブセット又は下位の範囲を、目的をもって選択する発明である。係争特許に限定されている特徴1及び2(すなわち1,000 g及び500 gの接触面積の数値範囲)及び特徴3(すなわちB4Bの弾性体の関係式を満たす)は、いずれも証拠23及び10等の従来技術では開示されていない技術的特徴であることから明らかなように、係争特許は既知の比較的大きな群又は範囲から、その中の具体的に開示されていない個別成分、サブセット又は下位の範囲を、目的をもって選択する発明により構成されたものではない。係争特許の目的は、可逆熱変色性インキを用いて自由に像を形成することであり、筆跡幅0.11mmの範囲において、500 g又は1,000 gの異なる荷重をかけて加圧する時の条件下でそれに対応する接触面積の範囲が得られるもので、それは、極小の筆跡幅では、ガラス板が負荷を受けて加圧をすることで接触する面積範囲が明確に特定されており、上記『既知の比較的大きな群又は範囲から、その中の具体的に開示されていない個別成分、サブセット又は下位の範囲を、目的をもって選択することで構成される』場合ではないため、係争特許は選択発明ではない。」。

 

知的財産裁判所は、さらに次のように述べた。「係争特許の明細書の実施例には、各種異なる接触面積と筆跡幅の態様の バリアブルがあり、摩擦回数又は強い加圧力を増加せずとも微小の面積部分は摩擦の選択性により容易に変色することができることが開示されている。したがって、係争特許の請求項1  500 g又は1,000 gの異なる荷重で加圧する条件下における対応する接触面積の範囲という技術的特徴は、通常の知識を有する者が狭い幅の筆跡に合わせて摩擦試験を繰り返して行うことでそれに対応する接触面積を容易に導き出せるものではなく、面積範囲を選定していない数値限定の公知技術にも属さず、選択発明の態様にも当然属さず、参加人による選択発明についての推定は採用することはできない。」。

 

よって、数値限定を含む請求項に係る発明は必ずしも選択発明に属するものとは限らないため、「既知の比較的大きな群又は範囲から、その中の具体的に開示されていない個別成分、サブセット又は下位の範囲を、目的をもって選択」したものであるか否かで具体的な判断をすべきである。

 

 



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