ニューズレター
マネーロンダリング防止法の規制対象に仮想通貨を追加
アジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)は2018年11月5日に台湾を訪れ、台湾に対する3回目の審査を行った。
今回の評価が低かった場合、金融機関の国際業務縮小や国民が海外投資する際の審査の厳格化を招き、さらには台湾の国際的な評判にまで悪影響を及ぼすことになるおそれがある。このような結果とならないよう、立法院は2018年11月2日に「マネーロンダリング防止法」改正案を可決した。この改正では、金融機関の内部監査や内部統制の法令遵守規範の強化に加え、仮想通貨のプラットフォーム及び取引業務が新たに同法の規制対象となり、さらに同法の域外効力の規定も新設された。
今回の「マネーロンダリング防止法」改正の主な内容は以下のとおりである。
1.仮想通貨のプラットフォーム及び取引業務についての事業を同法の対象とし、金融機関に関する規定を適用する(第5条)。
2. 金融機関及び指定された非金融の事業者又は人員は、マネーロンダリング及びテロ資金となるリスクのある業務の規模に応じて、マネーロンダリングを防止するための内部統制及び監査制度を確立しなければならない。これには、マネーロンダリング及びテロ資金化を防止するためのリスクアセスメントレポートを備え置き、定期的に更新すること、および監査手続きが含まれている。金融機関が規定に違反した場合には新台湾ドル50万元(台湾元)以上1000万元以下の過料、指定された非金融の事業者及び人員の場合には5万元以上100万元以下の過料に処すことができる(第6条)。
3. マネーロンダリング防止法の域外効力を追加したことにより、犯罪行為又は結果の発生地が中華民国の領域内である必要がなくなった。ただし、その特定の犯罪が行為地の法律では処罰されない場合は、この限りではない(第16条)。
国際的な反マネーロンダリング組織である「マネーロンダリング防止に関する金融活動作業部会(Financial Action Task Force on Money Laundering,以下「FATF」という)」は2015年6月に警告を発表し、仮想通貨がマネーロンダリングに利用される危険性を強調している。更にFATFが2018年10月に発表した基準では、仮想(暗号)資産にマネーロンダリング防止規定が適用されなければならないと明記された。これを受け、今回の「マネーロンダリング防止法」の改正は仮想通貨のプラットフォームと取引業務を適用対象とすることで、台湾のマネーロンダリング防止体制を更に完備したものとする狙いがある。行政院は、仮想通貨業が「マネーロンダリング防止法」の対象となった場合、金融監督管理委員会を所轄官庁とすることも決定しているので、下位法令については、金管会が制定することになる。