ホーム >> ニュース、出版物など >> ニューズレター

ニューズレター

搜尋

  • 年度搜尋:
  • 專業領域:
  • 時間區間:
    ~
  • 關鍵字:

進歩性を判断する際に当業者の技術水準を確立すべきか


簡秀如/Julie Wu

「発明の属する技術分野における通常の知識を有する者」(Person Having Ordinary Skill in the Art すなわちPHOSITA、以下「当業者」という)及びその技術水準の確立について、最高行政裁判所はかつて2016929日付の105年(西暦2016年)度判字第503号判決において、知的財産裁判所に対し、今後進歩性を判断する際に、「あらかじめ係争特許の技術分野、従来技術が直面する課題、課題解決の方法、技術の複雑性及びその実務従事者の通常の水準により、『当業者』の知識水準を確立したほうが好ましい」と要求した。また、「当該事件の上告人は原審で『当業者』とは何かについて何度も繰り返し議論が行われたが、原判決では係争特許の出願日前の当業者の技術水準はどのくらいかについてやはり説明しておらず、当業者であれば『車両が出車する時』の処理に必要なものを容易に想到することができると速断したため、判決には理由不備の違法がある」等として、原判決を破棄し知的財産裁判所へ差し戻した。

 

知的財産裁判所は当該事件の差戻審の手続きにおいて、極めて稀なことに裁判所のサイトにてアミカス・キュリエ(裁判所の友)の意見を公開聴取し、最終的に最高行政裁判所の上記判決と同じ立場をとらなかった。同裁判所の2018531日付の105年(西暦2016年)度行専更(一)字第4号行政判決では、次のような見解が示された。

 

一、当業者の知識及び技術水準は、原則的に引用文献の技術的特徴の具体的対比分析においてすでに実質的に暗示されており、別途明確に定義する必要はない。

 

当事者が引用文献を従来技術とすることに争いがなく、係争特許の技術的特徴がいずれも引用文献によって開示されているか否か、その相違点は容易に完成できるか否かにのみ争いがあり、また、特許主務官庁は拒絶査定をする際に、引用文献が開示する係争特許の各技術的特徴の箇所を具体かつ明確に指摘し、また既存の引用文献に基づき、いかに容易に係争特許発明の全ての技術的特徴を完成することができるかを具体的に記載することにより、裁判所を含めた第三者による検証の際に提供することができる場合、当業者の知識水準及びその特許出願日における技術水準については、その具体的記載の中にすでに実質的に示唆されており、当然別途明確に定義する必要はない。

 

二、当業者の知識及び技術水準に対する当事者の主張があり、かつ判断結果に影響する時初めて特別に判断を行う実益がある。

 

当事者が当業者について主張し、さらに、それがある特定の知識または技術を引用文献とすることができるか否かに影響すると主張した場合、特許主務官庁は査定の際に、当然当該特定の知識または技術当業者が接触または把握し得るものであるか否かについて明確に認定し説明する必要がある。この認定・説明の過程において、これにより当業者の知識または技術の水準が明確に確立される可能性もないとは限らない。また、この状況においてのみ、当業者の知識または技術水準を明確に確立して初めて進歩性の判断に実益があるのである。さもなければ、当業者の知識または技術水準について単純かつ明確に確立しても、本件の引用文献にいかなる具体的な特定または除外もなければ、このような明確な確立は実質的な意義はなく、または象徴的意義に過ぎないと言えるだろう。

 

三、たとえ当事者が当業者及びその技術水準について合意を達成していても、必ずしも裁判所を拘束するものとは限らない。

 

「当業者」及びその技術水準の確立には、事実認定の面も法律認定の面もある。事実認定の面については、法により弁論の趣旨及び証拠調べの結果を斟酌して、論理則及び経験則に基づきその真偽を判断すべきである。ある特定の技術が当業者が接触または把握し得るものであるか否かについて、当事者間で争いが生じた場合、実質的には「当業者」またはその係争特許の出願日における「技術水準」に対して争いが生じることと同じであり、この争いの調査認定は、一般事実の争いと同じであり、すなわち当事者双方及び参加人が裁判所の判断の基礎となるよう立証、弁論及び攻防を尽くすことになる。したがって、事実面については、個別事件において当事者間の攻防の証拠が異なる可能性があるため、同一特許が異なる個別事件または異なる手続において、裁判所が通常の知識を有する者及びその技術水準について異なる認定を下す可能性があることは当然である。

 

さらに、当事者の立証不足で、事実が真偽不明となる状況がもたらされた場合、専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)では進歩性欠如を「特許を取得してはならない」事由としていることから、この特許を取得してはならない事由を主張する者は不利な判断を受けるはずである。言い換えれば、特許の進歩性の欠如を主張する者は、客観的立証責任を負担しなければならないのである。

 

また、行政訴訟法第134条にすでに「当事者が主張する事実は、相手方が自認していても行政裁判所はその他必要な証拠を調べなければならない」と明確に規定されている。よって、たとえ当事者が「当業者」及びその特許出願日における「技術水準」について合意済みであったとしても、当該合意は必ずしも行政裁判所を拘束するものとは限らない。

 

また、「当業者」及びその係争特許出願日における「技術水準」の確立は、事実認定以外に、法律認定もある。法律認定に関する部分は、裁判所の解釈によるべきである。例えば、当業者について、複数の技術分野、複数の異なる技術能力を結びつけた一群の人とすることは可能なのか、また、一定程度のイノベーション力も備えるのか、それとも完全に従来技術の具体的指示のみを根拠として、異なる従来技術を組み合わせて発明を完成させることができるのか等、これらの法律認定については、法律解釈の一致性の維持のためにも当事者の合意により決めるべきではない。

 

知的財産裁判所は上記差戻上告審の判決において、原告が証拠1または証拠3は当業者が接触または把握し得る従来技術から除外されていることを主張せず、また、なぜ本件の通常の知識を有する者が「駐車場料金精算システム管理に12年従事した実務のあるエンジニア」であれば、証拠1または証拠3が開示する従来技術に接触または把握し得ないことも説明していないため、知的財産裁判所は原告による本件は当業者を確立すべきという主張には実益はないと判断した。

 

 

回上一頁