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著作権法における氏名表示権についての争い


Esther Lin

 台湾知的財産裁判所が2018125日付けで106年(西暦2017年)度民公上更(一)字第1号民事判決は、著作権侵害に関する民事事件である。この知的財産裁判所の判決では、著作者がすでに著作物に明らかに著作者名を表示しており、侵害者が当該著作物を使用する際に合理的な方法で著作者名を明示しなかった場合、著作者の氏名表示権を侵害するとされた。

 

 原告Aはワインの輸入業者・小売業者で、原告Aの担当者は、原告Aが輸入、販売するワインに関連する商品の紹介文を作成した。原告Aは、台湾人がワインをよく知らないため、購買する際に、商品の紹介文の推薦に頼ることが多く、ワインの販売にとって、係争紹介文には大きな重要性を持つものであると主張した。しかし、原告Aは、被告Bがコストを大幅に下回るような価格で原告Aのワインをダンピングしており、しかも被告Bが運営するソーシャルネットワーキングサイト等で係争紹介文を無断で利用し(剽窃)、インターネットを通じて頒布していることを発見した。原告Aは、被告Bがその同意を得ずに係争紹介文を剽窃し、さらに原告Aの著作権表示の文言を削除したことは、原告Aの氏名表示権の侵害に当たると主張した。

 

 知的財産裁判所の第一審判決では、被告Bは係争紹介文の全ての内容を剽窃せず、係争紹介文の一部内容を削除して「被告会社が酒類を販売している」との文言を加えていたので、被告Bは、原告Aの氏名表示権を侵害していなかった、と判示した。第二審に控訴した後、知的財産裁判所では、著作者の氏名表示権の侵害有無は、被疑者による実際の著作物の使用状況を見て、公衆に係争著作物の著作者が真正の著作権者ではないと誤認させたか否かで判断すべきである、また、著作権法第16条第4項においても、著作者は氏名の表示を省略することができると規定されているので、たとえ被疑者が著作者の氏名を表示しなかったとしても、必ずしも著作者人格権の侵害に当たるとは限らない、と判示した。被告Bが使用した紹介文には、原告Aの名称が表示されていなかったが、その全文の内容を見れば、閲覧者に被告Bが各紹介文の著作者であると誤認させることはなく、また、原告Aは著作物又は公開発表時において、その氏名を表示しており、被告Bの使用によりなんら影響を受けていなかったので、被告Bが原告Aの著作者人格権を侵害していたという原告Aの主張は、認められなかった。

 

 最高裁判所の民事廷は、以下のとおり判示した。係争紹介文は原告Aのウェブサイトに掲載され、タイトルにも氏名が表示されているので、著作者氏名の表示に関係していなかったといえるか否かについては、疑いが残される。もし、被告Bの紹介文にはその出所を表示されておらず、公衆に係争紹介文の著作者が原告Aではないと誤認させる虞があるかどうかは、検討の余地がある。原審では、著作者は著作権法第16条第4項の規定により氏名の表示を省略することができることを理由として、被告Bが著作者の氏名を表示しなかったことは著作者人格権を侵害しているとはいえないと判断したことには、議論の余地がある。

 

 本件については、最高裁判所から知的財産裁判所に差戻しにされた後、知的裁判所は差戻し審の判決(106年(西暦2017年)度民公上更(一)字第1号民事判決)において、下記のとおり判断を下した。係争紹介文が原告Aのウェブサイトに掲載された時、すでに積極的に名称を表示していたので、被告B原告Aの係争紹介文を利用する際には、原告Aの著作者人格権を尊重し、合理的な方法で著作者の名称を明示しなければならない。しかし、被告Bは原告Aの許諾又は同意を得ずに、オンラインで検索して係争紹介文を被告Bの紹介文として複製し、故意に係争紹介文の全ての内容を剽窃し、係争紹介文の著作権者の氏名を表示せず、さらに原告Aの著作権表示の文言を削除した上で、被告Bのフェイスブックとウェブサイトに掲載したことは、関連する公衆又は消費者に係争紹介文は被告Bが創作したものであるとの混同を生じさせる虞がある。被告Bは著作権表示の文字を故意に表示させず又は削除した行為は、原告Aの氏名表示権の侵害に該当する。

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