意匠権侵害の判断主体は誰か

簡秀如/Yu-June Tseng


 台湾専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第136条第1項に、意匠権者は、他人がその同意を得ずに「当該意匠」又は「当該意匠と類似する意匠」を実施することを排除する権利を専有すると規定されている。よって、意匠権侵害の有無は、被疑侵害品と係争意匠が「同一」又は「類似」であるか否かによって判断される。被疑侵害品と係争意匠との類否判断における対比については、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)が2016年に制定・公布した現行の「専利侵害判断要点」において、「『一般の消費者』が関連商品を購買する時の観点に立ち、係争意匠の権利範囲の内容全体と被疑侵害品における当該意匠に対応する意匠の内容を対比することにより、被疑侵害品と係争意匠が同一又は類似する物品であるか、及び同一又は類似する外観(日本の形態に相当)であるか否かを判断すべきである」とされている。換言すれば、上記「専利侵害判断要点」は意匠権侵害判断の対比のステップを「物品の同一又は類似の判断」及び「外観の同一又は類似の判断」の二段階に分け、いずれも「一般の消費者」を仮想の判断主体としている。

 

 しかし、知的財産裁判所が2017714日付けで下した105年(西暦2016年)度民専訴字第62号民事判決においては、上記「専利侵害判断要点」で規定された原則に従わず、「物品の同一又は類似の判断」と「外観の同一又は類似の判断」の2つのステップに対してそれぞれ異なる主体の観点から判断を行った。

 

1. 物品の同一又は類似の判断:「外観(意匠)の創作者」の観点を採用

 

上記判決では、次のように指摘している。意匠は視覚に訴える物品の外観のデザインを保護するものであり、意匠の完全な保護を実現し、悪意を持った者が意匠について創作価値のない転用を行えば、意匠権の権利範囲を免れることができるということがないよう、物品が同一又は類似であるか否かは、この物品分野における外観の創作者が容易に係争意匠を被疑侵害品に転用することができるか否かで判断すべきである。

 

当該判決では、次のように述べている。「一般の消費者」の観点に比べて、「外観の創作者」の観点を採用することは、意匠の権利範囲が比較的広く判断されることとなる。たとえ一般の消費者が両物品の違いを完全に識別できても、この物品分野における外観の意匠の創作が容易に転用できるため(例:自動車の意匠をプラモデルの自動車に転用する)、物品は同一又は類似であると判断される。

 

2. 視覚に訴える外観の同一又は類似の判断:「一般の消費者」の観点を採用

 

当該判決では「結局のところ物品の意匠の創作は一般の消費者による購買のために供される実用的な産業」であるため、外観の同一又は類似については、やはり一般の消費者の観点から判断するとされた。

 

 上記判決は、現行の「専利侵害判断要点」に規定された原則のほかに、別途異なる判断基準を設けたものであり、知的財産裁判所によるその他の判決の見解とも異なるため、これらの特殊な見解について、今後の実務の発展にどのようなインパクトを与えるのか、引き続き留意していく必要がある。

 


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