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専利無効審判の行政訴訟における請求人による新たな証拠の提出に関する制限



 専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)においては、原則として、無効審判を請求できる回数及び時点に関する制限はないが、無効審判及びその後の行政訴訟(日本の無効審決取消訴訟に相当)の蒸し返しを防止するため、「知的財産案件審理法」(中国語「智慧財産案件審理法」、以下「審理法」という)第33に、「当事者が専利権(特許権、実用新案権、意匠権を含む)の取消しに関する行政訴訟において、当事者が口頭弁論終了前に、同一の取消理由について提出した新たな証拠について、知的財産裁判所はやはりこれを斟酌しなければならない」と規定することで、紛争の一回的解決を図っている。

 

 上記審理法第33条の規定により、無効審判請求人は行政訴訟で無効証拠を追加する機会が与えられるが、当該条文の適用に制限はないのかとの疑義が生じる。その理由は、無効審判の行政訴訟は、請求人が「無効審判請求不成立」の審決(維持審決)に対して提起した義務付け訴訟で、又は専利権者が「無効審判請求成立」の審決(無効審決)に対して提起した取消訴訟であるかもしれないが、上記規定が前者の場合に適用されたときは、もちろん疑問はない。一方、後者の場合は、請求人はすでに無効審判の行政手続き段階で有利な判断を得ている以上、請求人が専利権者が提起した取消訴訟において新たな証拠を斟酌するよう裁判所に求めることを許可することが好ましいか否かについては議論の余地があるからである。

 

 これに対して、最高行政裁判所の100年(西暦2011年)度判字第2247号行政判決では、次のような否定説が採られている。同裁判所は、審理法第33条第1項の立法理由は、同一専利権に対して再び無効審判を請求してさらにもう一つの行政訴訟手続が生じるという紛争の繰り返しを避けるためであり、また、同条第2項に「智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は当該新たな証拠について答弁書を提出しなければならない」という手続的要件が設けられていることを参考にし、無効審判請求人が原告の場合(即ち請求人が智慧局による「無効審判請求不成立」の審決を不服として智慧局を被告として行政訴訟を提起した場合)に限り、新たな証拠を提出することができる、としている。しかしながら、知的財産裁判所は近年、紛争の一回的解決の目的に基づき、肯定説に転じているようである。即ち、たとえ専利権者が「無効審判請求成立」の審決を不服として提起した行政訴訟(つまり特許権者が原告の場合)でも、無効審判請求人が提出した新たな証拠又は新たな証拠の組合せをやはり斟酌することができる。

 

 以上のことから、審理法第33条第1項の規定が「無効審判請求人が原告の場合」に限り適用されるか否かについて、台湾の司法実務上ではなおも共通認識が形成されていないことが分かる。最高行政裁判所の106年(西暦2017年)度判字第177号行政判決では、すでにこの問題について意識しているが、これは法律見解の違いであり、上告人はこれに基づき原確定判決の法令の適用に明らかに誤りがあるとしてはならないと示すにとどまった。

 

 最高行政裁判所の20154月の第1回法廷長裁判官連合会議での決議、及び同裁判所の106年(西暦2017年)度判字第442号等の判決要旨によると、新たな証拠が提出された場合において、知的財産裁判所は専利権者が「すでに智慧局へ訂正請求を提出した」か否かを確認しなければならず、かつ手続き上「当該新たな証拠に対して当事者がすでに十分な弁論」を行い、並びに「裁判所により適切に争点が明らかにされて」初めて裁判所は審理法第33条第1項の規定に基づき、新たな証拠をもって原処分の審決を変更することができる。よって、専利権者が原告の場合、原告はすでに「無効審判成立」の審決を受けているため、現在の智慧局における実務に基づくと、原告はもはや無効審判請求人がその後に提出した新たな証拠に対して再び「請求項の訂正」という防御方法を採ることはできない。知的財産裁判所が審理した結果、専利権者の提訴には理由があるが、無効審判請求人の新たな証拠がやはり係争専利の専利要件欠如を証明するに足ると判断した場合、専利権者はその請求項の訂正に対応することができない状況において、紛争の一回的解決及び無効審判請求人の立証によって受けた利益を考慮しただけで直接上記肯定説を採って、専利権者の手続及び実質的利益のバランスをとることができなくなることが好ましいか否かについては、やはり再度考慮する必要がある。

 

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