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「係争特許と権利侵害被疑物との相違点は容易に完成できるか否か」を均等侵害の判断要素とする



「均等論」は特許侵害を判断する重要原則の一つであり、その意義は、特許権者の利益を保障する立場に基づき、他人が係争特許の請求項の技術的手段に些細で非実質的な変更を加えることだけによって、特許権侵害の責任を回避することを防止することにある。さらに言えば、「均等論」とは請求項の言語的限界を補うためであり、特許権の範囲は請求項の限定する「文言範囲」のみに限られるものではなく、「均等範囲」にまで適度に拡大することができるということである。

 

台湾の現在の司法実務では、係争特許の請求項の技術的特徴と権利侵害被疑物の技術内容が異なるが、互いに「均等」であるか否かを判断しようとする際に、一般的にいわゆる「三重の同一性テストtriple identity test」が採用される。即ち、権利侵害被疑物の対応する技術内容と係争特許の請求項の技術的特徴とが、実質的に同一の方法(way)で、実質的に同一の機能(function)を果たし、実質的に同一の結果(result)を得る時は、権利侵害被疑物の対応する技術内容と係争特許の請求項の技術的特徴との相違点が非実質的であり、両者は均等であると判断しなければならない。

 

「均等論」を実際に適用する際には、争点は通常、「実質的に同一」という不確定法概念をどう判断するかに生じる。台湾経済部智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)は去年(即ち201625日)に大幅改訂し公表した「特許侵害判断要点」の中で、「均等論」の「実質的に同一」の判断原則について、「いわゆる『実質的に同一』とは、両者の相違が当業者であれば容易に完成できる又は自明であることを指す」と定められている。この内容は、一般的に「進歩性」を判断する基準(容易に完成できる又は自明であるか否か)をそのまま援用したもののようであり、両者をどのように区別するかについて疑義があると思われる。これは、最高裁判所が2017424日に下したばかりの106年度(西暦2017年)台上字第585号民事判決の理由見られる。

 

本事件において、権利侵害被疑者は、その製造販売した係争商品が「凸状露出部の下縁面が凸型ブロックの斜面に沿う」設計を採用しているため、「ラチェット」と「ハブ」が、通常、「常時閉鎖状態」になっており、そうすると、消費者は自転車を直接押して前進又は後退させることができるため、ペダルの回転を心配する必要はないと主張している。反対に、係争特許では「突柱が弁孔のシュートに沿う」構造の設計を採用しており、消費者は先ずペダルを逆回転させることにより、ラチェット機構を後ろに回転させて、さらにラチェット機構上の突柱を弁孔の内側まで回して初めて「ラチェット」と「ハブ」を分離させ「常時閉鎖状態」という結果を達することができる。よって、消費者は自転車を押す時には、押す前に足又は手でペダルを後ろに回転させて初めてペダルが転動しないようにできるため、より不便で面倒であることは明らかである。最高裁判所はこれに基づき、知財裁判所による原判決では、係争特許の「突柱が弁孔のシュートに沿う」と係争商品の「凸状露出部の下縁面が凸型ブロックの斜面に沿う」との相違部分はいずれもカムに類似した原理を応用したものであるのか否か、また、実質的相違のない等価置換であるのか否かについて詳しく審理されていないとして、原判決を破棄し差し戻した。

 

最高裁判所は判決において、「いわゆる特許侵害における均等論とは、権利侵害被疑物と係争特許の請求項とを対比して、両者が技術手段、機能及び結果の3つについて実質的に同一かを判断するものである。いわゆる実質的に同一とは、侵害物が採用する代替手段が、当業者が明細書(特に請求項と発明の詳細な説明)の記載により、一般的な専門知識及び職業経験に基づいて、容易に思いつくもので、置換が容易であることをいう」等と指摘しており、前述した特許侵害判断要点の要旨とほぼ合致する。しかし、その判決の論理構造を見てみると、権利侵害被疑者は均等論の抗弁に対し「進歩性」判断に類似した論述方法を採用しているようであり、その係争商品は係争特許に比べて効果がより好ましく、その相違点は当業者が容易に完成できるものではないため、「均等論」を適用する余地はない、と強調している。このような論述方法は最高裁判所も認めるところのようである。

 

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