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特許権存続期間の延長登録制度の改正及び延長登録審査基準の改訂の議題について



 

智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は「専利法」(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)における特許権存続期間の延長登録制度に関する条文及び延長登録の出願に関する審査基準の規定全般にわたる見直しを行うため、2017620日に「特許権存続期間の延長登録制度改正及び延長登録の出願に関する審査基準改訂に係る説明会」を開催した。当該説明会で議論された議題は以下のとおり。

 

1.         「専利法」第53における許可証取得後の特許権存続期間(許可の取得日から延長後の特許期間満了日までの期間)の総計期間の制限に係る規定の新設の要否について

 

現行の「専利法」第53条においては、許可証取得後の特許権存続期間の総計に係る制限規定が設けられていないため、我が国における特許期間の延長登録査定は、一部医薬品に我が国の市場を15年以上独占する期間をもたらすことになった。それに対して、米国における特許権存続期間延長後の市場独占期間は14年、欧州の補充的保護証明書SPC制度における市場独占期間は15年を上限としている。我が国においては医薬品許可証取得後の特許権実施の期間制限がなく、比較的緩やかであることから、米国の延長制度を参考にして上限を14年とする甲案、若しくは欧州の延長制度を参考にして上限を15年とする乙案を採用することを検討している。

 

会議では、先発医薬品(新薬)メーカーと後発(ジェネリック)医薬品メーカー双方の意見が喰い違っていた。先発メーカーは、こうした制限は新薬の市場への早期投入の意欲の低下をもたらすと主張している。例えば、許可証が特許出願10年以内に取得された場合、上限規定があることで5年の延長期間を取得することができなくなるため、早期に許可証を取得する動機を低減させることになる。これは、台湾の患者にとって革新的医薬品の使用が遅れ、市場に出回る新薬が減少し、同時にジェネリック医薬品の発売の低下を招くことにもなり、共倒れになることを意味する。一方、後発メーカーは、いずれも制限を設けて延長される特許期間を短縮することに賛成している。

 

2.         「第一回許可証」に記載された「有効成分」の認定について

 

現行の延長登録審査基準における「有効成分」とは、医薬品、農薬の組成において薬理作用を持つ成分を指す。さらに特許請求の範囲には少なくとも1つの請求項の記載内容が許可証に記載された有効成分と対応しなければならないとされている。ただし、医薬品許可証の処方欄に記載された有効成分が特定の化合物の塩類、水和物形式である場合、通常、有効成分は当該特定の化合物それ自体と認定することができる。実務上、化合物の異なる塩類、水和物、エステル類などによってそれぞれ許可証を取得する状況があることに鑑み、化合物の異なる塩類、水和物、エステル類、異性体などはいずれも異なる有効成分であり、それらがそれぞれ取得した医薬品許可証はいずれも「第一回許可証」とすることを検討している。

 

会議では、これについて、多くの後発メーカーから反対意見が出た。その理由は、こうした措置は裁判所による認定に困難をもたらすとともに、将来の法律訴訟の攻防及び裁判官による認定にも困惑をもたらしやすくなり、かつ、有効成分の異なるエステル類、異なる塩類又は異なる水和物はいずれも同一の化合物で、開発コストが低いため、特許権の存続期間を延長することが合理的ではないからである。反対意見を述べた先発メーカーもあった。その理由は、化合物の異なる塩類、水和物、エステル類、異性体によってその他の許可証を取得することはめったにないことからみて、この措置を講ずる実益はないものとの考えからである。

 

3.         「第一回許可証」の判断基準緩和の要否について

 

現行の延長登録審査基準における「第一回許可証」の認定とは、許可証に記載されている有効成分及び用途の両者を併せて判断するものである。これにより、同一の有効成分及び同一の用途の医薬品について、その後別途、新剤型、新用量、新規の単位当りの含量の製剤などによって取得した許可証はいずれも「第一回許可証」に属するものではなく、これに基づいて医薬品、農薬に関する特許権の存続期間の延長登録を出願することはきない。よって、「第一回許可証」の認定を緩和するとともに、剤型、用量などの項目を加えて又はそのいずれか一つを選択した上で、それを有効成分及び用途と併せて「第一回許可証」の判断基準とすることを検討している。

 

会議では、先発メーカーと後発メーカーはいずれも反対の立場をとっていた。本議題について、参加者のほとんどは現行の規定を維持することに賛成した。

 

4.         医薬品の国内外における臨床試験期間の開始日と終了日の認定基準を一致させるかについて

 

現行の延長登録審査基準における医薬品の臨床試験期間の計算について、国内外でその臨床試験期間の開始日と終了日の認定基準が一致していない。国内における臨床試験について、その「開始日」とは、衛生署(日本の厚生労働省に相当)が申請者による国内の臨床試験(ブリッジング試験を含む)計画の実施に同意した時に発行した試験実施同意書の発行日を指す。「終了日」とは衛生署が当該臨床試験(ブリッジング試験を含む)の報告の届出に同意した時に発行した同意書の期日を指す。一方、外国における臨床試験は、臨床試験報告書に記載された試験の開始日と完了日をその開始日と終了日とする。よって、医薬品の国内外における臨床試験期間の開始日と終了日の認定基準を一致させるか否かを検討している。

 

会議では、先発メーカーは特許権存続期間の延長制度の趣旨に合致するため、現行の規定を維持し、即ち、許可証を取得するために特許発明を実施することができなかった期間を延長期間に算入することに賛成した。一方、後発メーカーは当然、国内における臨床試験期間の開始日と終了日をそれぞれ試験の開始日と終了日として、延長可能期間を短縮することに賛成した。

 

5.         農薬登録の予備審査の流れの所要時間の国内における農薬登録申請の審査期間への算入可否について

 

行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)は2009年から農薬登録の予備審査制を導入しており、業者が一部完成済みの試験資料を審査のため予め送付することを認めている。農薬登録の審査期間を短縮するため、予め送付した資料に不備がある場合、補正するよう書面で通知し、審査をパスしたら審査資料完備という旨の書面を発出することになり、業者が検査登録に要する試験資料を完備すると正式に農薬登録を申請することができる。この予備審査制はサービス的性質のものであるが、実際はすでに審査が行われているため、予備審査の事実が「出願人が完全な資料を添付して登録審査を申請する旨の書面を送付する」前に発生した場合、農薬登録の審査期間に算入されることができることを検討してる。

 

会議の参加者のほとんどは製薬メーカーであるため、この農薬の特許権存続期間の延長議題については議論されていない。

 

6.         「特許権存続期間延長登録審査決定規則」第9条の適用について

 

「特許権存続期間延長登録審査決定規則」(中国語「專利權期間延長核定辦法」)第9条では、「特許権存続期間の延長登録出願について、審査した結果、許可証を取得するため特許発明を実施することができなかった期間がその延長登録出願された期間を超えていると判断された場合、その延長登録出願された期間に限るものとする」と定められている。しかし、実務上、「延長登録出願」とは第一回に延長登録の出願をした時点を指すのか、それとも出願人が延長期間認定の審査を行うための基礎資料の変動に基づいてその延長を求める期間の変更を申請した時点を指すのかについては、見解が分かれている。よって、延長登録審査基準において、以下の審査注意事項を書き加えることを検討する。つまり、まず、願書に記載された延長を求める期間が確実に記入されているかどうかを審査し、記入内容が確実ではないと判断した場合、願書に記載された延長を求める期間を補正するよう出願人に通知するとともに、資料サービス組に改めて公告するよう送付する。その後、審査を経て認めた延長期間が変動したとしても、公告の延長登録出願された期間を超えてはいけない。

 

会議では、先発メーカーと後発メーカーはいずれも反対の立場をとっていた。その理由は、後発メーカーはそれを後発医薬品の市場展開のための根拠とは見なしておらず、また、智慧局が出願を受理した後に、まず願書に記載された延長を求める期間が確実に記入されたかどうかを審査し、補正するよう出願人に通知し、さらに改めて公告することは無駄な行政資源と時間を費やすことになるからである。

 


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