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智慧局による「訂正に関する特許審査基準」の改定



 台湾専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第67条第1項では、次の各号の事項についてのみ、特許公報で公告された特許明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。(1)請求項の削除、(2)特許請求の範囲の減縮、(3)誤記又は誤訳の訂正、及び(4)不明瞭な記載の釈明、と定められている。さらに、同条第4項では、「訂正は、公告時の特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更してはならない」と定められている。台湾智慧財産局(日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は、20161227日付けで「特許審査基準第二篇第9章訂正」の改定版を公表した。その改定版は201711日より施行される。

 

 今回の主な改定内容として、(1)訂正が実質的変更となるか否かの判断が、本来の形式要件による審理から、発明の目的による実質的判断に変更されたこと、及び(2)「訂正事項」の態様が緩和されたことが含まれる。

 

 以下に、訂正に関する審査基準の改定内容について、さらに説明する。

 

1.     特許請求の範囲の減縮

今回の改定では、「訂正後の発明の属する技術の分野と発明の解決しようとする課題が訂正前のものと異なることはできない」という記載が削除された。その理由は、智慧局はこのような記述は冗語であり、特許請求の範囲を減縮するときは、やはり実質的に変更してはならないという要件を満たさなければならないと考えているからである。

 

2.     誤記の訂正

今回の改定には、「その発明の属する技術の分野における通常知識を有する者が明らかに間違った内容があることを直ちに知ることができその本来の意味は、明細書、特許請求の範囲又は図面にすでに明確に記載されている実質的に開示されているもので、分析時に、本来の実質的内容に影響を及ぼすことのないものをいう。」ことが含まれている。その理由は、現行の審査基準では、本来の記載が明らかに漏れ又は誤りであるか否かを判断するとき、その本来の意味は、明細書、特許請求の範囲又は図面に「すでに明確に記載されている」ものである限り誤訳の訂正が認められることについて言及していないため、誤解を招くことのないように、今回の改定では「すでに明確に記載されている」を「すでに実質的に開示されている」に修正する

 

3.     不明瞭な記載の釈明

今回の改定では、「公告された特許請求の範囲の記載について理解が困難になりやすい場合、引用記載形式の請求項を独立項に書き換えることも不明瞭な記載の釈明の事項に属する」という内容が追加されることになる。

専利法第26条第2項に規定する請求項は、明確、簡潔な方式で記載しなければならないという要件を満たすため、「理解が困難になりやすい場合」との条件下で、例えば従属項が独立項に開示された範囲を超え又はその内容に合致していない場合のみ、独立項に書き換えることができる。

原則的に、今回の改定では、単一項引用記載形式の請求項(独立項と従属項を含む)を独立項に書き換えることのみが認められることになる。複数項引用又は複数項従属の請求項の訂正については、やはり「審査注意事項」に関する記載において、引用され又は従属された一部の請求項が削除される前提においてのみ、請求項の総数を増加することができるというルールに従わなければならない。

 

4.     公告時の特許請求の範囲の実質的拡大に関する判断

今回の改定では、「特定用途の請求項をその他の用途にも適用可能な請求項に訂正する場合」が特許請求の範囲の実質的拡大に関する態様に属するという記載が削除された。

この削除は2013年版審査基準の改定に合わせたものであり、物の用途による特定は目的又は使用方法のみを記述するもので、当該物がある特定の構造及び∕又は組成を備えていることが示唆されていない場合は、その用途による特定は限定作用を有さない。よって、2013年以降に特許査定された「用途によって特定された物の請求項」に対する訂正は、当該用途が限定作用を有さない場合、訂正(用途の変更又は削除)前後の請求項の発明の目的はやはりその物自体の構造又は組成にあり、用途の変更によって影響を受けることはなく、実質的な拡大又は変更とならないため、訂正を認めることができる。

しかしながら、訂正の審理は訂正請求時の法律及び基準に基づいて行われるため、権利範囲の解釈が混乱しないよう、2013以前に特許査定された「用途によって特定された物の請求項」に対する訂正である場合、その「用途によって特定された物」の請求項の範囲の解釈は、やはり特許査定時の審査基準に基づかなければならず、つまり当該「用途」は限定作用を有すると見なされ、当該用途を削除又は変更する訂正は、特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更するものであるため、訂正を認めるべきではない。

 

5. 公告時の特許請求の範囲の実質的変更に関する判断

今回の改定では、公告時の特許請求の範囲を実質的に変更しているかの判断基準について、本来の形式要件による審理(すなわち「請求項が訂正により訂正前の特許請求の範囲に記載された技術的特徴の下位概念に属する又はさらに特定された技術的特徴ではないものが盛り込まれた」及び「特許出願に係る発明の産業上の利用分野又は発明の解決しようとする課題が訂正前のものと異なる」場合は実質的変更となる)から発明の目的による判断(すなわち「請求項に技術的特徴が盛り込まれたことで、訂正前の請求項の発明の目的を達成することができなくなった」場合は実質的変更となる)に変更した。

発明の目的について、今回の改定では、さらに「原則的に、各請求項の発明の目的の判断とは、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、各請求項ごとに記載された発明の全体を対象とし、並びに明細書に記載された発明の解決しようとする課題、課題を解決するための技術手段及び従来技術と比較した効果を参酌した上で、当該発明の具体的な目的を認定することである。しかし、明細書に開示されていないが、直接導き出せるものであれば、当該請求項の発明の目的として認めることもできる」と明らかに定めた。

 

 今回、訂正に関する審査基準の改定は、訂正内容が公告時の特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更するか否かの判断をさらに明確にするもので、特許査定公告後の訂正請求に大きく役立つものとなるはずである。


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