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租税回避措置の防止を目的とする「被支配外国会社(CFC)」及び「実際の管理場所(PEF)」制度導入に関する法改正


Judy Lo/Josephine Peng/Leo Tsai

租税回避防止措置を継続することは、多くの国の税務機関が重視する課題となっており、台湾の財政部(日本の財務省に相当。)は、経済協力開発機構(OECD)が公表した「税源浸食と利益移転」(BEPS)の15項目の行動計画に対して、作業グループを複数設立して検討を行いました。それを踏まえ、財政部は、税制法令を国際税務規範に合致するものにするとともに、租税回避を減らすため、OECDが提案する特定措置(税務法令の改正及び課税政策の見直しを含む)を採用しました。

 

財政部は、2016年初めに、所得税法第43条の3及び同法第43条の4の改正案を策定しました。この改正案には、2つの重要な国際税制制度、すなわち「被支配外国会社(CFC=Controlled Foreign Company)」及び「実際の管理場所(PEM=Place of Effective Management)」(以下、これらを「租税回避防止条項」といいます。)が含まれ、立法院(日本の国会に相当。)での審議に付されました。「パナマ文書」によって企業及び個人が国外会社を通じて不当に納税を回避していることが判明したことの影響により、立法院は早くも2016712日に本改正案を可決し、同月27日に総統により公布されました。

 

もっとも、この「租税回避防止条項」は営利事業者にのみ適用され、個人には適用されません。そこで、個人名義でCFCを設立する方法によって租税負担を回避することを防ぐため、行政院(日本の内閣に相当)によって個人CFC制度を導入するための所得基本税額条例の改正案が策定され、現在立法院で審議されています。これについては、この所得基本税額条例改正案が可決し次第、改めてお知らせいたします。

 

以下では、7月に成立した改正法の「租税回避防止条項」の概要について、改正の背景、国内外の投資者又は営利事業者に対する影響及び施行日の見通しについてご説明しいたします。

 

Ⅰ CFC制度

 

一、改正の背景

中華民国の現行税制では、わが国の営利事業者が国外で投資により得た利益については、国外関係企業が実際に利益を配当した際に初めてその所得に算入され課税されます。そのため、わが国の営利事業者は常に国外関係企業の利益をわが国に配当するのを先延ばしにしています。そこで、わが国の営利事業者が利益を低税率国家・地区に留保することを阻止するため、「租税回避防止条項」として被支配外国会社(CFC)制度が所得税法に組み込まれました。

 

二、CFC制度の概要

(一)       CFCの定義

国外関係企業が次の(1)(2)の双方の条件を満たす場合、中華民国営利事業者のCFCとなります。

(1)    国外関係企業が、わが国の営利事業者及びその関係人によって直接又は間接に保有されている株式又は資本額が合計50%以上に達している場合、又は、わが国の営利事業者及びその関係者が国外関係企業に対し重大な影響力を有する場合。

(2)    国外関係企業が低税負担国家・地区(現地の営利事業者の所得税税率が11.9%よりも低い地区又は現地で発生した所得に対してのみ課税される地区を指す。)で設立された場合。

 

(二)       免除規定

CFC制度は、次のいずれかに該当するCFCには適用されません。

(1)      CFCが現地において実質的な運営活動に従事している場合。

(2)      CFCの当年度の利益が一定の基準(財政部が定める。)未満である場合。

 

(三)       CFC制度下での課税規定

中華民国営利事業者は、CFCの当年度の利益について、持株比率及び保有期間に基づき投資収益を計上し、課税を受けるものとされています。

 

(四)       欠損控除・重複課税の回避

CFCの分配可能利益を正確に反映するため、CFCの各期の欠損については、会計士の監査及び国税局の審査を経た上で、欠損発生年度の翌年度より10年間、当該CFCの利益から控除することができます。

 

また、中華民国営利事業者にCFCの投資収益として計上された場合、実際に配当を受領した年度に、その受領た配当を再度課税所得に算入する必要はありません。これにより二重課税となることを避けています。

 

三、CFC制度の影響

 

所得税法がCFC制度を導入することにより、国外関係企業の利益に対する課税が繰り延べられてしまっている状況を改善することができます。また、国外関係企業が正常にその利益を中華民国営利事業者へ分配することを促すことができるといえます。

CFC制度下での税務への影響を考慮すると、わが国又はわが国以外の投資者は、スキームにわが国の営利事業者及び国外関係企業の双方が含まれる場合、当該国外関係企業を低税負担国家・地区に設立する必要性について改めて評価しなければならず、適切なスキームとなるよう調整する必要があるといえます。

 

Ⅱ PEM制度

 

一、改正の背景

中華民国の現行税制では、国外営利事業者は、中華民国の国内源泉所得のみに対して課税されます。これによって、一部の投資者は、実際はわが国で運営しているのに、低税負担国家・地区に国外営利事業者を設立することによって、居住者の身分を転換し、納税申告すべきわが国の営利事業所得税を回避しています。このような租税回避を防ぎ、これらの類型の国外営利事業者に実際にわが国の税制を適用できるようにするため、「租税回避防止条項」として実際の管理場所(PEM)制度が所得税法に組み込まれました。

 

二、PEM制度の要点

(一)       PEMの定義

「実際の管理場所(PEM)」とは、営利事業者の実際の管理及び商業的な決定を行なっている場所を指します。具体的には、営利事業者は次の3つの要件に該当する場合、そのPEMは中華民国領域内にあるとみなされます。

(1)      重大な経営管理、財務管理及び人事管理をする意思決定者がわが国の領域内に居住する個人であること、又は「総機構」(本社)がわが国領域内にある営利事業者であること、又はかかる決定をする場所がわが国領域内であること。

(2)      財務諸表、会計帳簿記録、取締役会議事録又は株主総会議事録の作成又は保管の場所がわが国領域内であること。

(3)      わが国領域内にて、実際に主要な経営活動を行なっていること。

 

(二)       PEM制度下での課税規定

低税負担国家・地区において設立された国外営利事業者で、そのPEMが中華民国にある場合、「総機構」(本社)がわが国領域内にある営利事業者とみなされ、所得税法及びその他関連法律規定により、その全世界で発生した所得について、税率17%で営利事業所得税が課されます。

 

(三)       PEM制度の優先適用

国外営利事業者で、そのPEMが中華民国領域内にある場合、PEM制度が優先適用され、CFC制度は適用されないこととなります。

 

三、PEM制度の影響

PEM制度は、中華民国営利事業者が単にわが国の営利事業所得税を回避することを目的に、低税負担国家・地区において国外営利事業者を設立する状況を阻止できるものです。

 

また、PEM制度は、これに該当する国外営利事業者に有利となる可能性があることに留意すべきです。なぜなら、当該営利事業者はわが国の居住者とされるため、わが国及びその他の国家・地区が契約締結した租税協定により提供される優待税率の適用を受けることができるからです。両岸(台湾及び中国)の間の租税協定により提供される減税・免税の優遇措置は、中国とその他の国家・地区が締結した租税協定における減税・免税にかかる優遇措置よりもはるかに優遇されています。わが国又はわが国以外の投資者は、PEMに該当する国外関係企業が中国への投資を行った場合、両岸租税協定が発効したときに(現在なお立法院にて審議中。)、投資者は両岸租税協定による減税・免税の優待を受ける権利があることを主張することができることになります。

 

Ⅲ、CFC及びPEM制度の発効期日

 

「租税回避防止条項」が成立した後、営利事業者にスキームの必要な変更をするための十分な時間を与えるため、立法院は行政院に施行期日を定めることを授権しました。行政院は、次の3つの事項を考慮するして、施行期日を定めることとなります。

一、両岸租税協定の発効、執行状況。

二、国際間でのOECD「共通報告基準」(CRS=Common Reporting Standard)により執行される「税務用途金融口座情報の自動的な交換」の状況。

三、関連法規の整備状況。

 

なお、財政部によれば、「租税回避防止条項」の施行は、早くても、2018年になるとのことです。

 

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