専利進歩性判断の緻密化

Katherine Juang


専利特許、実用新案、意匠を含む)有効性の判断において鍵となる「進歩性」要件、即ち「発明がそれが属する技術の分野における通常の知識を有する者が出願前の従来技術に基づいて容易に完成できる場合、依然として特許を受けることができない」(「専利法」第22条第2項)に係る要件は、各国の裁判所実務において当該要件の判断時にしばしば「後知恵」を生じ、台湾の裁判所も同様の問題によく直面する。この問題につき、最高行政裁判所の最近のいくつかの判決はいずれも、「後知恵」の発生を回避するため、まず「通常の知識を有する者」の水準を定義してから、当該水準の者が評価を行わなければならず、且つ、評価を行う際には、なぜ「出願前の従来技術に基づいて容易に完成できるのか」についても精査しなければならず、そのうえで初めて適法な判断を下すことができる、と明示している。以下に2つの判決を抄録する。

 

一、最高行政裁判所の104年(西暦2015年)度判字第326号判決(2015618日)は、「特許無効審判請求事件の進歩性に関する審査において、『当該発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が、従来技術に開示されている内容及び出願時の通常知識を参酌して、係争の発明を容易に完成できるか否かを判断する』ステップに入る前に、まず『属する技術の分野における通常の知識を有する者』の技術水準という客観的な判断基準を確立しなければならない」と再度指摘している。当該判決には、「そのうち『属する技術の分野における通常の知識を有する者』及び従来技術(即ち、引用証拠)が開示する内容の確立は、進歩性の客観的判断の重要なステップである」と明示されている。

 

二、当該技術水準を確立した後、「係争発明を容易に完成できるか否か」について、最高行政裁判所の104年(西暦2015年)度判字第452号判決(2015813日)は、さらに、「『後知恵』が生じないようにするため、どのように従来技術から係争発明に関する教示や示唆を得て容易に完成することができたのか、詳細に判断及び説明しなければならない」と指摘している。当該判決には、「進歩性の審査につき、発明の詳細な説明において採用される、順を追って浅い内容から深い内容に徐々に難度を上げていくという説明方法により生じる『後知恵』を以って『容易に完成できる』という判断を下し、かかる判断に基づいて『発明が進歩性を具えない』と認定してはならない。また、係争発明の全体を無効審判請求証拠と比較し、当該発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が出願時の通常の知識を参酌するという点から、客観的な判断を下さなければならない。いわゆる『それが属する技術の分野における通常の知識を有する者が、出願前の従来技術に基づいて容易に完成できる場合』とは、結局のところ、証拠3のどの技術特徵の転用、置換により、又はどの技術特徴の教示、示唆により容易に完成できるのかについて、原審は詳しく調査することなく、判決のなかで説明することもなく、原判決で、当該技術特徴は『それが属する技術の分野における通常の知識を有する者が出願前の従来技術に基づいて容易に完成できる場合を超えていない』と判示しており、軽率な判断のきらいがある」と明示されている。

 

上記の判決から、今後、事件の審理において、個別事案ごとに関連する客観的な判断の基準を確立することが、進歩性要件の正確な判断に役立つことがわかる。

 


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