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中国最高人民裁判所が司法解釈を公布—台湾民事判決の承認及び執行について—

Daisy Wang/齊楊


2015630日に「海峡両岸司法互助協定」(「海峽両岸司法互助協議」)が発効6周年を迎えた際に、中国最高人民裁判所(以下「最高裁判所」)は記者会見を開いて、2014年以降の人民裁判所の台湾関連司法互助作業の情況についてマスコミに報告するとともに、台湾関連司法互助の典型的な事例を15例公布し、台湾民事判決の承認・執行の互助に関する以下の2つの司法解釈を公布した。

1.     《最高人民裁判所の台湾地区における裁判所の民事判決に対する承認・執行に関する規定》(《最高人民法院関於認可和執行台湾地区法院民事判決的規定》)(法釈〔201513号)

2.     《最高人民裁判所の台湾地区における仲裁判断の承認・執行に関する規定》(《最高人民法院関於認可和執行台湾地区仲裁裁決的規定》)(法釈〔201514号)。

上記2つの司法解釈は、既に201571日から施行されている。

台湾民事判決の中国での承認及び執行について、1998年以降、最高裁判所は前後して4つの司法解釈を公布したが、上記2つの司法解釈の公布により、従来の4つの司法解釈(以下のとおり)も同時に廃止された。

1.     《最高人民裁判所による人民裁判所の台湾地区関連裁判所の民事判決の承認に関する規定》(《最高人民法院関於人民法院認可台湾地区有関法院民事判決的規定》)(法釈〔199811号)

2.     《当事者が台湾地区関連裁判所の民事調停書又は関連機関の発行又は確認した調停協議書について人民裁判所に承認を申し立てた場合に人民裁判所が受理すべきか否かに関する最高人民裁判所の意見回答》(《最高人民法院関於當事人持台湾地区有関法院民事調解書或者有関機構出具或確認的調解協議書向人民法院申請認可人民法院應否受理的批復》)(法釈〔199910号)

3.     《当事者が台湾地区関連裁判所の下した支払い命令について人民裁判所に承認を申し立てた場合に人民裁判所が受理すべきか否かに関する最高人民裁判所の意見回答》(《最高人民法院関於當事人持台湾地区有関法院支付命令向人民法院申請認可人民法院應否受理的批復》)(法釈〔200113号)

4.     《最高人民裁判所による人民裁判所の台湾地区関連裁判所の民事判決の承認に関する補充規定》(《最高人民法院関於人民法院認可台湾地区有関法院民事判決的補充規定》)(法釈〔20094号)

全体的に言えば、2015630日に公布された2つの司法解釈の重点には、案件管轄裁判所の拡大、受理条件の適度な規制緩和、救済措置の増加などが含まれており、その規定内容の要点は以下のとおりである。

一、案件管轄裁判所の拡大

記者会見の内容は以下のとおり。従来の司法解釈によれば、管轄権を有する裁判所は、通常、申請者の住所地、常居所又は被執行者の財産所在地の裁判所である。実務上、中国に住所又は常居所のない台湾人居住者が特定の法律関係が存在するか否かの確認を裁判所に請求しようとしても(判決の承認・執行を裁判所に請求するのではなく)、従来の司法解釈によれば、当該台湾人居住者には訴える場所がない可能性がある。新たに公告された2つの司法解釈によれば、台湾地区裁判所の民事判決(仲裁判断)の承認を請求する事案については、申請者の住所地、常居所又は被申請者の住所地、常居所、財産所在地の中級人民裁判所又は専門人民裁判所がそれを受理することになる(法釈〔201513号、第14号の第4条を参照)。

二、受理条件の適度な規制緩和

最高法院港澳台工作小組辦公室(中国最高人民裁判所の香港・マカオ・台湾関連作業を取り扱う部門)の郃中林主任は、次のように述べている。従来、台湾側からの法律文書の提出は、まず台湾公証機関の公証を経るとともに、中国の関連公証協会の認証を受けなければならず、そうしてはじめて立件に同意することができた。新たに公告された2つの司法解釈によれば、台湾民事判決の原本を提出するとともに、申立書を提出すれば、裁判所は立件に同意する。

《最高人民裁判所の台湾地区における裁判所の民事判決に対する承認・執行に関する規定》(《最高人民法院関於認可和執行台湾地区法院民事判決的規定》)第7条の規定によれば、台湾の裁判所の民事判決に対する承認を申し立てる場合、申立人は申立書を提出するとともに、台湾の関連裁判所の民事判決書及び民事判決確定証明書の正本(又は相違ないことが証明された副本)を提出しなければならない。台湾の裁判所の民事判決が欠席判決である場合、申立人は当該台湾の裁判所が既に適法に当事者を召喚したことを証明する書類を同時に提出しなければならないが、判決で既にこの事実が明確に説明されている場合は除外する。

三、当事者の利便性の向上

新たに公告された2つの司法解釈によれば、申立人が他人に台湾の裁判所の民事判決(仲裁判断)に対する承認の申立てを委任する場合、人民裁判所に委任者が署名又は捺印した「授権委託書」(委任状)を提出しなければならない。台湾地区、香港特別行政区、マカオ特別行政区又は外国の当事者が署名又は捺印した「授権委託書」については、関連する公証、認証その他の証明手続きを行わなければならない。但し、「授権委託書」が人民裁判所の裁判官の立会いのもとで署名された場合、又は中国の公証機関の公証を経て中国で署名されたものであることが証明されている場合は除外する。(法釈〔201513号、第14号の第6条を参照)

最高法院港澳台工作小組辦公室の郃中林主任は、「新たに設けられた上記規定は主に当事者の身分の真実性を確保するとともに、当事者の便宜を図るものである」と述べている。

四、手続きの正当性

新たに公告された2つの司法解釈によれば、本規定(法釈〔201513号、第14号)第4条及び第7条に規定されている条件を満たす申立てについて、人民裁判所は申立て受領後7日以内に立件するとともに、申立人及び被申立人に通知し、同時に被申立人に申立書を送達しなければならない。本規定の第4条及び第7条に規定されている条件を満たさない場合、人民裁判所は7日以内に受理しない旨の裁定を下すとともに、受理しない理由を説明しなければならない。申立人は、裁定に不服がある場合、上訴することができる。

最高法院港澳台工作小組辦公室の郃中林主任は、次のように述べている。新たに設けられた規定が執行されることによって、被申立人は判決の承認手続きが進行中であると知ることができ、これについて意見を提出することもできる。2つの司法解釈の公布前は、申立人が判決承認手続きの進捗情況を把握するのは難しく、しかも、両岸司法互助が実施されておらず、両岸のどちらでも他方当事者への送達を要求する規定を設けていない。新たに公告された2つの司法解釈によれば、いずれの当事者も関連手続きを遵守しなければならず、送達も行わなければならない。

五、不承認及び申立て却下の裁定

また、郃中林主任は、次のように指摘した。「これまで司法解釈には、承認しない旨の裁定に係る処理方式しか規定されておらず、いったん承認しない旨の裁定が下されれば、裁判所の判決と同様、実体問題に対して認定を行ったに等しい。その後、当事者は同一の台湾の判決について承認・執行の申立てを行うことができず、その他の救済措置もなかった」

新たに公告された2つの司法解釈によれば、申立人が真実、有効な台湾の民事判決文書であることの証明を提出し、関連規定に基づいて審査を行ったうえで、当該判決文書の承認が認められなかった場合に限り、裁判所は承認しない旨の裁定を下すことができる。文書の真実性、有効性を確認することができない場合、裁判所は申立て却下の裁定を下すことのみが認められ、申立て却下後、申立人は、関連資料を補充強化し、別途、申立てを提出することができる(法釈〔201513号第16条及び法釈〔201514号第15条を参照)。

六、救済措置の追加

《最高人民裁判所による人民裁判所の台湾地区関連裁判所の民事判決の承認に関する規定》(《最高人民法院関於人民法院認可台湾地区有関法院民事判決的規定》)には、新たな救済手続きが導入されている。第18条の規定によれば、当事者は上記裁定(文書の真実性、有効性を確認することができない旨の裁定)に不服がある場合、裁定が送達された日から10日以内に一級上の人民裁判所に「覆議」(再度審議すること)を請求することができる。つまり、裁判所が裁定を作成した後、いずれの当事者も、当該裁定に不服であれば、一級上の裁判所に一回限りの「覆議」手続きを請求することができる。

七、台湾における判決の承認・執行の申立て期間

今回新たに公布された司法解釈は、承認・執行を申し立てる期間について特に明確に規定しており、即ち、中国民事訴訟法第239条の規定に照らして台湾の裁判所の民事判決、仲裁判決の承認・執行を申し立てる期間を決定しなければならないと規定している(法釈〔201513号第20条及び法釈〔201514号第19条を参照)。つまり、台湾で判決が出されてから2年以内であれば、中国の裁判所に承認・執行を申し立てることができる。

《最高人民裁判所の台湾地区における裁判所の民事判決に対する承認・執行に関する規定》(《最高人民法院関於認可和執行台湾地区法院民事判決的規定》)及び《最高人民裁判所の台湾地区における仲裁判断の承認・執行に関する規定》(《最高人民法院関於認可和執行台湾地区仲裁裁決的規定》)の2つの司法解釈が公布された後、当該司法解釈が知的財産権事案にどのような影響を及ぼすのかを注視する必要がある。公開されている資料によると、既存の司法互助事案のなかに知的財産権事案はまだなく、この類の事案の承認・執行申立てについての審理規範はまだ明確ではない。しかし、今回新たに公布された司法解釈によって、承認・執行可能な台湾の判決及び仲裁の範囲が拡大され、かつ、事案の受理手続きが簡素化されるため、中国と台湾の司法体制に対する相互支援が重要な一歩を踏み出したことは確かである。

 


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